大型電池の世界市場が5年後に2兆円に成長、富士経済が予測電気自動車

富士経済が6種類の技術について市場規模を予測した。EVの普及を追い風にリチウムイオン二次電池の市場規模は12.6倍にも成長する。2016年にリチウムイオン二次電池が世界の大型電池市場に占める割合は58.4%に達するという。

» 2011年06月01日 20時50分 公開
[畑陽一郎,@IT MONOist]

 調査会社である富士経済は、電気自動車(EV)やスマートグリッドなどに使う大型の電池関連について、2016年時点の世界市場規模を予測した。調査対象は6種類の技術。リチウムイオン二次電池とニッケル水素電池、鉛蓄電池の他、スマートグリッドに有用なNAS(ナトリウム硫黄)電池と、小容量ながらエネルギーの急速な出し入れが可能なリチウムイオンキャパシタと電気二重層キャパシタである。

 2010年現在、世界市場規模は6403億円であるという。これが2016年には2010年比約3.3倍の2兆1002億円に成長すると予測した。年平均成長率に換算すると、21.9%に相当する。最も成長が著しいのがリチウムイオン二次電池であり、市場規模は975億円から12.6倍の1兆2256億円に伸びるという。リチウムイオン2次電池以外の5技術の合計は5428億円から8746億円へ、1.6倍に成長する(図1)。

ALT 図1 大型電池の世界市場予測 富士経済が予測した。EVやPHEV、FCV(燃料電池車)などの次世代自動車、電動アシスト自転車や鉄道車両などの輸送機器、太陽光発電システムや風力発電システムと組み合わせて使う電力貯蔵分野を対象とした。携帯電話機やノートPCなどの小容量品は数値に含まれていない。

 現在の電池市場は全体の6割強を鉛蓄電池が占め、3割強がニッケル水素電池とリチウムイオン二次電池である。これが2016年には6割弱をリチウムイオン二次電池が占め、鉛蓄電池の比率は3割弱に下がる。

リチウムイオン二次電池はEV用途で伸びる

 2010年時点ではリチウムイオン二次電池の用途の94.8%をHV(ハイブリッド車)やEV、電動アシスト自転車、輸送機器用が占めている。2016年には、ニッケル水素電池からの切り替えと、EVの拡大によって市場が拡大する。EVやその他の輸送機器が占める比率も97.2%まで拡大する。一方、2016年時点でも、太陽光発電や風力発電などの再生可能エネルギー関連はリチウムイオン二次電池市場全体の0.7%を占めるにすぎないと予想した。

 富士経済はEVなどの次世代自動車用途とスマートグリッド(電力貯蔵・系統安定化システム)用途についてそれぞれの電池市場の規模を予測した。次世代自動車用途では、1356億円(2010年)の市場が、7.4倍の1兆130億円に成長するという。2010年時点ではハイブリッド車(HV)が次世代自動車のほとんどを占めているため、1356億円のうち、1000億円はニッケル水素電池である。2014年にはEVやプラグインハイブリッド車(PHEV)の普及が進むため、1兆円市場のうち、9000億円弱をリチウムイオン二次電池が占めるようになるという。

 スマートグリッド用途は2010年時点では電池市場全体の5%(321億円)を占めるにすぎないが、2016年には3.8倍の1226億円に成長するという。再生可能エネルギーの大量導入により、系統安定化対策が商用ベースで本格化するのは2010年後半から2020年ごろと予測しており、スマートグリッド用途の本格的な伸びは2016年以降になる模様だ。

 富士経済は今回の予測を3分冊の「エネルギー・大型二次電池・材料の将来展望 2011」として出版している。

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