全体最適を目指すグローバルPLMのグランドデザイングローバルPLM〜世界同時開発を可能にする製品開発マネジメント(4)(3/3 ページ)

» 2011年02月08日 00時00分 公開
[三河 進/NECコンサルティング事業部,@IT MONOist]
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3. 本格的に始まった新興国対応に向けてのものづくりプロセス改革

1)リーマン・ショックからの回復に伴った投資の開始

 図6は、2006年以後の製造業と非製造業の営業利益を指数化したものの推移をプロットしたグラフです。日本の製造業は2009年初頭に大きな打撃を受けました。非製造業と比較すると、一層その落ち込みの大きさを理解することができます。リーマン・ショック以前の状態とまではいきませんが、製造業各社の製品の高付加価値化や経費削減の努力で、状況改善をうかがうことができます。

 最近は、業務プロセス改革や情報システムに対する投資も活性化してきているように感じます。最近のコンサルティングの相談内容で多いのは、圧倒的にグローバルものづくりを実現するための業務プロセスやIT導入に関するものです。いよいよ日本の製造業も、新興国需要獲得のための本格的な基盤作りに着手し始めたのではないでしょうか。

図6 製造業と非製造業の営業利益の推移 図6 製造業と非製造業の営業利益の推移
資料:財務省法人企業統計HPから入手した原数値により作成
検索条件は、規模10億円以上の企業の営業利益(当期末)
2007年1〜3月期を1として指数化

2)グローバル開発のキーは、3次元設計とグローバルPLM

 グローバル開発のキーワードは、やはり3次元CADを活用した設計と生産連携を意識したグローバルPLMであると思います。3次元CADデータを活用して図面レス化を実現し、業務の効率化を図ることや、海外技術者とのコミュニケーションを図れるようにすることが狙いです。

 また、グローバルPLMは、グローバル環境での技術情報の一元管理です。全世界どこにいても同じ情報にアクセスできることを目指します。

 グローバルPLM実現のためには、部品コード体系や開発プロセスの標準化についても踏み込んでいく必要があります。これらのテーマについては、次回以降の連載で事例や推進方法を含めてご紹介していきたいと考えています。

3)グローバルで通用する人材の育成

 今後、情報インフラや業務プロセスの整備は進んでいくでしょうが、最終的にはグローバルで通用する人材の育成が課題になると思います。これまで国内で通用してきたあうんの呼吸がグローバル環境では通用しません。先進国や新興国との競争や協業において、グローバルで通用するものづくりを実践するためには、海外の研究者や技術者たちと円滑にコミュニケーションを取り、あるべきものづくりの本質論を追究できることが生き残りのための課題になるのではないでしょうか(次回へ)。

筆者紹介

三河 進(みかわ すすむ)

三河 進(みかわ すすむ)NECコンサルティング事業部(http://www.nec.co.jp/service/consult/services/07.html

NCPシニアビジネスコンサルタント
システムアナリスト(経済産業省)
全能連認定マネジメントコンサルタント
PMP(米国PMI)

精密機械製造業、PLMベンダ、外資系コンサルティングファームをへて、現職。
専門分野は、開発設計プロセス改革(リードタイム短縮、品質マネジメント、コストマネジメント)、サプライチェーン改革(サプライヤマネジメント)、情報戦略策定、超大型プロジェクトマネジメントの領域にある。
自動車・電機・ハイテク・重工などのPLM・SCMに関する業務改革プロジェクトに従事中。
論文「モジュール化による設計リードタイムの大幅短縮」で平成20年度の全能連賞を受賞。

おことわり

本記事は執筆者の個人的見解であり、NECの公式見解を示すものではありません。



世界同時開発を推進するには?:「グローバル設計・開発コーナー」

 世界市場を見据えたモノづくりを推進するには、エンジニアリングチェーン改革が必須。世界同時開発を実現するモノづくり方法論の解説記事を「グローバル設計・開発」コーナーに集約しています。併せてご参照ください。



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