ここまでで、モジュール化や目的別BOM、SCMとの関係について理想的なコンセプトやシステム上の処理についての説明をしてきましたが、最終的には、人間のマネジメントがきちんと機能しているかどうかが運用できるか否かのポイントとなります。
ここからはモジュール設計の成果物である「標準モジュール」のメンテナンスについて紹介していきます。「標準モジュール」ですので、機能面やコスト上の改善を進めるために設計変更が頻繁に発生することが前提です。
某電機設備メーカーでは、モジュール設計を導入した際に、組織改革も同時に実施しました。モジュール設計の推進を一時的なものでなく、恒久的に継続させるために、モジュールの開発およびメンテナンスを専任で行うグループを設置したのです。このメーカーでは、当初、営業設計部門とオーダー別設計部門の2部門で構成されていたのですが、モジュール開発部門とモジュールのカスタマイズ部門を新設し、4部門で分業して対応できるようにしました。
モジュールを作成した時点での一時的なものではなく、継続的にマネジメントしていくための工夫が必要であることを実証した事例であると思います。
フォーキャスト対象の部品は、対象案件と見積もりBOMの情報があればシステム処理で自動的に出力することができます。引き付け発注システムを利用すれば、自動的に発注日をシステムが人間に教えてくれます。
これは非常に便利なことなのですが、結局どの案件を戦略的に投入するかを決めているのは人間の判断です。この判断は、商談案件の具体的な状況、顧客の意思決定や検討の状況、地域個別の商習慣、製造ラインや要員の稼働状況、景気の動向などを総合的に判断して決定していく必要があります。
リスクの低い意思決定をするための方法はあると思いますが、最終的には人間の情報収集能力や、合意形成プロセスに依存するものであると思います。
フォーキャストや生産管理プロセスそのものの前提となる情報ですが、標準調達リードタイムや部品の納期管理も、重要なマネジメントプロセスです。
一般的に製造業は非常に多くの種類の部品種を取り扱っており、部品番号別の調達リードタイムの適切性を把握するのは困難な作業であると考えられます。しかし、部品種ごとに、調達コストや調達リードタイムの交渉を図り、地道にコスト削減やリードタイム削減を図ることは、全体のリードタイム削減やコスト削減につながっていきます。
このようなマネジメントプロセスの積み重ねが、企業としての競争力、グローバル競争を勝ち抜くためのポイントではないでしょうか(次回へ)。
三河 進(みかわ すすむ)
NECコンサルティング事業部
(http://www.nec.co.jp/service/consult/services/07.html)
NCPシニアビジネスコンサルタント
システムアナリスト(経済産業省)
全能連認定マネジメントコンサルタント
PMP(米国PMI)
精密機械製造業、PLMベンダ、外資系コンサルティングファームをへて、現職。
専門分野は、開発設計プロセス改革(リードタイム短縮、品質マネジメント、コストマネジメント)、サプライチェーン改革(サプライヤマネジメント)、情報戦略策定、超大型プロジェクトマネジメントの領域にある。
自動車・電機・ハイテク・重工などのPLM・SCMに関する業務改革プロジェクトに従事中。
論文「モジュール化による設計リードタイムの大幅短縮」で平成20年度の全能連賞を受賞。
本記事は執筆者の個人的見解であり、NECの公式見解を示すものではありません。
世界市場を見据えたモノづくりを推進するには、エンジニアリングチェーン改革が必須。世界同時開発を実現するモノづくり方法論の解説記事を「グローバル設計・開発」コーナーに集約しています。併せてご参照ください。
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