連載第1回の適用分野で説明したとおり、LINは主に快適装備品などに使用されるため、車両の状態によって通信を必要としない場合があります。例えば、キーレスエントリーでドアを施錠した場合、リモコンからのドアロック要求を受光するセンサECUは、次の開錠命令を受けるまでLIN通信は不要です。
この“通信が不要な状態”となったときに「省電力モード(ウェイクアップ/スリープモード)」に切り替えることで、LINノードの消費電力を抑えることができます。
この省電力モードの切り替えを行うのが、ネットワークマネジメントです。
ウェイクアップシグナルを送信してもスケジューリングが開始されない(Breakが検出されない)場合、スレーブタスクはウェイクアップ要求を繰り返すことができます。ウェイクアップシグナルの間隔(リセッシブ状態)は、150〜250ms(LIN1.xでは、最大128ビット)です。ウェイクアップシグナルが合計3回送信されてもスケジューリングが開始されない場合、1.5秒(LIN1.xでは、1万5000ビット)以上の休止状態の後に、4回目のウェイクアップシグナル送信が可能になります(図13)。
ネットワークマネジメントのタイミングパラメーターは、LINプロトコルバージョンによって異なります。LINプロトコルバージョンごとのタイミングパラメーターをまとめると以下になります(表1)。
LIN1.xでは、タイミングパラメーターはビット時間(TBit)で定義されています。つまり、LIN1.xでは、通信速度によってタイミングパラメーターが異なります(表2)。
LIN記述ファイルは、LINネットワークを定義する標準形式で、LINの仕様書に規定されています。LIN記述ファイルには通信速度、ノード、フレーム、シグナル、通信スケジュールなどのLIN通信に必要な情報を定義します。
LIN記述ファイルのフォーマットは、テキストベースとなっておりLINの通信規格と同様、非常に簡易的です。
LIN記述ファイルは、各開発工程間や自動車メーカーとサプライヤ間の共通インターフェイスとして機能し、非互換性などの問題を軽減できます。またシステムジェネレータによるLIN通信ドライバの生成、解析・シミュレーションツールの設定に使用します。解析・シミュレーションツールでは、スケジュールに従ったヘッダー送信、スケジュールテーブルの切り替え、シグナル単位での解析や値の変更などが簡単に行えます(図15)。このように、LIN記述ファイルを使用することで効率的な開発が可能となります。
今回は、LINフレームの構造、ネットワークマネジメント、LIN記述ファイルについて説明しました。LINフレームの各フィールドの役割やLINフレームタイプの違い、LIN記述ファイル使用のメリットなど理解いただけましたでしょうか。
さて次回は、「ステータスマネジメント」「ノードコンフィグレーションと識別」など、LIN2.0、2.1で追加された仕様について解説します。ご期待ください! (次回に続く)
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