自信にあふれ、魅力的なプレゼン発表だったのに、結果的にはうまくいかなかったというのはよく聞く話です。プレゼンの成否に大きくかかわるのが、最後の質疑応答の時間です。プレゼン発表までは念入りな準備やリハーサルで自分のペースで進めることが可能ですが、質疑応答では予想もしなかった質問や、つい感情的になってしまう質問などで、ペースを乱されてしまうこともあります。プレゼン発表の最後の関門、質疑応答を効果的に行い、プレゼンの目的を達成するためのコツを、いくつかご紹介します。
出される可能性のある質問を想定し、その回答を準備しておくというのが、地味ながら最も効果的な対処法になります。想定した質問が実際に出され、それに準備したとおりに回答していくうちに、プレゼン発表の興奮も落ち着き、より冷静な対応ができるモードに切り替わってきます。このクールダウン効果は、想定外の質問や状況が発生したときに絶大な効果を発揮しますので、たとえ即答できるような質問でも、事前に一度整理しておくことをお勧めします。
プレゼンの場はやはり緊張するものです。発表後にうまくクールダウンができていない状況では、相手の質問の内容も正確に理解できず、長々話したものの結局質問に回答していないというケースがよくあります。この状況を避けるために、質問を受けたら、「○○○というご質問ですが、結論からいえば×××です」と、質問と回答の結論を端的に伝え、それから結論の背景や理由について話すよう習慣付けるようにしましょう。最初に質問を繰り返す時点で、結論を整理する時間を持つことができ、かつポイントがずれないという点で、とても効果的なやり方です。
プレゼンの内容について疑問や不信をあらわにした質問が出されることはよくあることです。例えば、「効果の試算は本当に正しいのか? 甘いんじゃないのか?」という質問が出された場合、しっかりと練り上げた内容ほど、「いえ、あの試算は××と△△に基づいて……」と躍起になって相手に反論したくなると思います。そのときの自分の表情を鏡で見ると、ぶ然とした表情になっているかもしれません。これでは質問者も一層むきになって、あなたを論破したくなることでしょう。
このようなネガティブな質問があった場合には、まず「判断のポイントである試算について、ご心配になるのは当然だと思います」と、質問者の立場でその気持ちを一度肯定することが大切です。そして一呼吸置いてから、質問者の疑問に答えを出すようにします。これにより、質問者の気持ちも、そして自身の気持ちも落ち着いて、建設的な質疑応答ができるようになります。
出された質問に対して明確に答えられない場合、適当に答えてお茶を濁すということは決してやってはいけません。この対応1つで、これまでのプレゼン発表の内容そのものへの信頼度がなくなってしまう可能性もあります。
分からないものは「それに関しては調べていないので分かりません」と、後日回答できるものであれば「すぐに回答できかねますので、○日までにあらためてご回答いたします」と正直に、かつ誠実に答えましょう。
ここまで過去3回にわたり、企画書作成、プレゼン資料作成、プレゼン発表のコツやポイントをお伝えしてきましたが、いかがでしたでしょうか? 1つでも、使ってみたいなと思っていただけるコツはありましたでしょうか?
製品や業務をより良いものに改善するにはどうすべきかを常に考えられている技術系部門や生産部門の皆さんですが、部門を横断して人を動かす、全社的な製品・業務改革を行うということになると、途端に消極的になってしまうという方も少なくありません。
部分最適ではなく、全社最適を目指した取り組みを行う場合、いかに他部門の人々と協力して同じゴールを目指せるか、ということが非常に重要になってきます。そのためのツールとして、企画書やプレゼンは決して欠かすことができない存在です。
「会社はもっとこうすべきなのに」「会社をこう変えていきたい」という皆さんの思いは、会社を強くする何よりの宝です。「そういうのは苦手だから……」と尻込みすることなく、組織を動かすエンジニアとして活躍していただけるよう、ぜひ企画やプレゼンの機会には積極的に手を挙げて、ご自身やチームのアイデアを会社全体に広げていっていただきたいと思います。
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最後になりましたが、当連載を数多くの方に読んでいただきましたことに、心より感謝申し上げます。ちょっとしたコツを使うことで成功体験を持っていただき、「企画やプレゼンは苦手」という意識を薄めるお手伝いができましたらこれ以上の喜びはありません。
最後までお読みいただき、ありがとうございました!(連載完、第1回へ)
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