岡谷エレクトロニクス主催セミナーに登壇したインテルは、組み込み市場向け製品戦略、組み込み用途向け新Atomプロセッサに関する講演を行った。
2010年4月23日、岡谷エレクトロニクス主催のテクニカルセミナー「Atomプロセッサで実現する次世代デジタルサイネージ 〜組込みLinux、Windows Embedded双方からのアプローチ〜」が開催された。
本稿では、「インテル 組込み市場向け製品戦略 〜インテル Atomプロセッサー〜」と題し、最初に登壇したインテル エンベデッドIA FAE 町田 奈穂氏の講演内容について紹介する。
インテルは、シリコンプロセスの微細化の歩みとともに戦略的にCPU性能の向上を図り、PC/サーバを中心に、さまざまな分野でビジネスを展開している。講演の冒頭、町田氏はインテルの製品戦略について「インテルの強みであるサーバ、デスクトップPC、ノートPCなどのほか、MID(Mobile Internet Device)、コンシューマエレクトロニクス、ヘルス、NAND、ネットブック、組み込み機器など、さまざまな分野への展開を狙っている」と述べた。
組み込み機器市場にフォーカスすると、現在、30以上の分野、3500社以上の顧客がインテル・アーキテクチャを採用しているという。組み込み向けでは、PowerPC、MIPS、ARMなどのアーキテクチャが名を連ねるが、「実は、10年以上前からワイヤレス、ルータ、POSなどの機器を中心にインテル・アーキテクチャが採用されている」(町田氏)という。そのほか、カーナビゲーションシステムなどの車載機器、IP電話、IPカメラ、パワーライン、セキュリティ、VoIP、IPTV、デジタルサイネージ、PLCをはじめとする産業機器など、多くの実績があるとし、「2010年、特に注力している分野の1つが“デジタルサイネージ”だ」(町田氏)と今後の展開を示唆した。
2008年度で見ると、組み込み市場全体に対し、インテル・アーキテクチャをベースとした組み込み市場のシェアは31%だったという。「今後は、そのほかの組み込み機器市場に対し、インテル・アーキテクチャを展開していく」と、町田氏は組み込み機器市場への展望を語った。
組み込み機器市場への展開において、ここで気になるのが製品の供給期間だろう。インテルは、一般的なPC用途向けの製品サイクルを“18カ月”としているが、「組み込み用途向け製品の場合、発表から“7年以上”の供給を行う」(町田氏)としている。組み込み分野の中でも特に産業機器分野などでは5〜10年、もしくはそれ以上の長期利用が考えられるため、PC向けとは異なる「長期供給期間」のサポートが掲げられている。
PC/サーバ分野で培われたインテル・アーキテクチャを組み込み機器へ利用する流れは、製造/試験装置、工作機械などを中心に進んでいるが、インテルは、単に組み込み向けに最適なものを選択・転用するのではなく、「組み込み分野のさまざまなニーズに対応できるよう周波数、消費電力、周辺機能などを最適化したものを組み込み向け製品としてリリースしている」(町田氏)という。
続いて、町田氏は2010年上半期の最新製品情報として「組み込み用途向けインテル Coreプロセッサ・ファミリの追加」と「組み込み用途向けインテル Atomプロセッサ・ファミリの追加」について紹介した。
Coreについては、3つのチップセット、13のプロセッサが製品ラインアップに追加されたとのこと。「組み込み向けなので、サーバやPC用途とは異なる周波数をサポートしている」と町田氏はいう。
さらに、Atomの新ラインアップの特徴に触れる前に、組み込み市場におけるAtomプロセッサの展開について町田氏は次のように説明した。「ご存じのとおり、最初はネットブックで普及しはじめたが、現在、産業向けシステム、プリンタ、サイネージなどへ広がりを見せつつある」(町田氏)。
Atomの新ラインアップは、処理性能/グラフィックス性能の強化のほか、Atomファミリではじめてデュアルコアを採用するなどのハイパフォーマンス化がなされている。また、コンポーネントの数を3つから2つにまとめたことで、デザインの簡素化、省スペース化を実現するほか、インターフェイスにPCI Expressを採用し、拡張・柔軟性を持たせるなどの強化が図られているとのこと。
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