東京ビッグサイトで2010年1月20〜22日に行われた電気自動車(EV)/ハイブリッド車(HEV)向け主要技術の展示会「EV・HEV駆動システム技術展(EV JAPAN)」では、本格的なEV時代の到来に向けたインフラ面でのソリューションとして、急速充電器/充電スタンドの展示に注目が集まっていた。
2010年2月1日に日産自動車が発表した1つのニュースが、図らずも電気自動車(EV)の弱点を露呈した。
その内容は、日産自動車と全国旅館生活衛生同業組合連合会(全旅連)が連携し、全国に約1万8000ある全旅連加盟の宿泊施設にEVの充電インフラを整備。宿泊業界の新たな需要創出と、EV普及を促進していくというものだ(プレスリリース)。
これは2010年末に発売が予定されている日産自動車のEV「リーフ」をはじめ、今後訪れるEV社会を見据えてのことだろう。リーフは満充電で走行できる距離が160km(100マイル)となっている。通常のガソリン車の場合、40リッター以上のガソリンタンクを搭載しているケースが一般的なので、満タン時の走行距離は300kmを下ることはほとんどない。
「グローバルにみても80%以上のドライバーは、1日の走行距離が100km以下」(日産自動車)とはいうものの、満充電しても東名高速で東京IC―静岡IC間(161.8km)、中央自動車道で調布IC―諏訪南IC間(164.3km)ぐらいしか走行できないとなると、「ちょっと遠出して温泉旅行でも」とはならないだろう。EV普及には充電インフラの整備が急務なのだ。
東京ビッグサイトで1月20〜22日の期間開催されたEV/ハイブリッド車(HEV)向け主要技術の展示会「EV・HEV駆動システム技術展(EV JAPAN)」でも、本格的なEV時代の到来に向けたインフラ面でのソリューションとして、“EVのガソリンスタンド”――急速充電器/充電スタンドの展示に来場者の注目が集まっていた。本稿では、EV普及のカギを握る充電インフラの最新動向を紹介する。
同時開催されていた「国際カーエレクトロニクス展(カーエレ JAPAN)」やそのほかのEV JAPANの記事は以下を参照
NECのブースでは、EV充電体験コーナーを設置。「来たるべきEV時代に備え、実際の利用シーンで発生するさまざまな課題を探る」(同社)ことを目的に、アンケートに答えれば誰でもEV充電が体験できるデモンストレーションを行っていた。NECは新日本石油らと共同でEV充電インフラの実証実験を展開しており、認証課金システムの開発を行っている。
ブース内にはNECのグループ会社である高砂製作所のEV充電器を設置。インストラクターの説明の後、EV充電作業を疑似体験でき、充電可能状態になるまでのタイムによって記念品がもらえるという流れだ。実際に体験した来場者に感想を聞いてみると「ケーブルがけっこう重く、なかなかカチンとコネクタがはまらなかった」といった声が多かった。
ブース担当者も「規格で定められたケーブルやコネクタは、技術者が実験レベルで使うには十分な性能と安全性を持っているのだが、これを不特定多数の一般ユーザー、特に女性や老人の方に使ってもらうにはまだまだ改良すべき点は多い」と操作性での課題を指摘する。
「今回、このような体験コーナーを出展するにあたり、コネクタメーカーにも声をかけており、ここで得られた意見やデータをメーカーにフィードバックする予定。もともとNECは長年ユーザーインターフェイスの研究を行っているので、EV充電器のような未来のインフラ整備にわれわれの技術が貢献できればと考えている」(担当者)。
今回、会場に展示されていたEV用充電器の接触式コネクタはすべて、日本電動車両協会規格「JEVS G 105-1993(電気自動車用エコ・ステーション急速充電システムのコネクタ)」に準拠したもの。同規格ではコネクタ以外にもケーブルやEV間通信規格などEV用充電器のさまざまな仕様を細かく定められており、メーカー側が勝手にその仕様を変えるわけにはいかない。
その重たいケーブルとコネクタの取り回しに工夫していたのが、アルバックだ。ブースでは約25分で80%の充電が行える急速充電器を展示していたが、この急速充電器には、回転式のスタンド一体型ケーブルを装備。これはガソリンスタンドやセルフの洗車場などに設置されている車内向け掃除機の吸引ホースの取り回し機構を応用したものだという。
「重いケーブル/コネクタをなんとか楽に取り回してもらうための苦肉の策。このあたりの工夫は各社いろいろなアプローチを行っていくだろう。ただ、規格で決められているケーブルとコネクタの重さだけはどうしようもない。広く普及するためにはこのあたりの改良も早急にしてもらいたい」(担当者)。
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