EV/HEV時代に欠かせないエレクトロニクスメーカーカーエレ JAPAN/EV JAPANレポート(1/2 ページ)

カーエレ JAPAN/EV JAPAN(2010年1月20〜22日開催)では、電気自動車やハイブリッド車が普及するために欠かせない技術を持つエレクトロニクス企業が注目を集めていた。次世代を担う電子部品メーカーの最新テクノロジーを紹介しよう。

» 2010年01月26日 00時00分 公開
[西坂真人,@IT MONOist]

 カーエレクトロニクス関連の技術を集めた総合展示会「国際カーエレクトロニクス展(カーエレ JAPAN)/EV・HEV駆動システム技術展(EV JAPAN)」が、東京ビッグサイトで1月20〜22日の期間開催された。本稿では、次世代の自動車として期待される電気自動車(以下、EV)やハイブリッド車(以下、HEV)が普及するために欠かせないテクノロジーの最新動向を紹介する。


画像1 「国際カーエレクトロニクス展/EV・HEV駆動システム技術展」の会場。次世代の自動車として期待されるEV/HEV向けの技術に注目が集まった

EV/HEV時代で注目されるエレクトロニクス企業

 2009年はトヨタ・プリウスやホンダ・インサイトなどHEVの好調なセールスで盛り上がった次世代自動車市場。2010年も引き続きHEVが、停滞する自動車市場をリードしていくと見られている。また、2010年末には日産がEV「リーフ」を市場に投入する予定など、EV市場もいよいよ立ち上がりそうだ。

画像2 ホンダ・インサイト(左) トヨタ・プリウス(中央) 日産・リーフ(右)

 EVやHEVは従来の内燃機関のみの自動車に比べて、エレクトロニクス技術への重要性が非常に高まる。EV/HEVを構成する部品メーカーの顔ぶれを見ても、これまでにないエレクトロニクス企業が名を連ねるようになってきた。

 そんな企業の1社が、コンデンサメーカーのニチコンだ。

アナログ技術のノウハウをEV/HEVに――ニチコン

 ニチコンはコンデンサの技術を生かしたスイッチング電源製品にも定評があるが、その回路技術を応用して、EV向け充電器一体型DC-DCコンバータ、ハイブリッドカーのインバータシステム用フィルムコンデンサやアルミ電解コンデンサなど、エコカーの心臓部を支える製品を開発している。会場では、2009年7月に国内で発売された三菱自動車のEV「i-MiEV」向け充電器一体型DC-DCコンバータや、同じく2009年7月発売の富士重工業のEV「プラグイン ステラ」向けインバータ/コンバータなど、すでに市販EVで採用済みのEV向け製品群を紹介していた。

画像3(左) 三菱自動車のEV「i-MiEV」向け充電器一体型DC-DCコンバータ。画像4(右) 富士重工業のEV「プラグイン ステラ」向けDC-DCコンバータ。

 これまでエンジンなど動力機関は、自動車メーカー各社が開発から生産まで一貫して行っていくのが通例だった。だがEVやHEVでは、自社開発のほかにエレクトロニクスメーカーが提供する動力モジュールを購入するという選択肢も選べるようになった。これらのモジュール化が進めば、動力機関が占める製造コストを大幅に削減できるほか、自動車メーカーへの新規参入も容易になる。

 「iMiEV向けには充電器一体型DC-DCコンバータをモジュール化して提供しても、ほかのEV向けには充電器やDC-DCコンバータをパーツごとに提供するなど、現状では自動車メーカーのニーズに合わせた専用設計になっている。今後もどこまで共通化が図れるかは分からないが、将来的にはこの充電器一体型DC-DCコンバータを単体で販売するという可能性はある」(担当者)。

 同社はこのようなモジュール化の技術のほか、CAN通信のソフトウェアも社内で開発できるようになっているという。

 「エレクトロニクスの世界はデジタル化が進んでいるが、充電器やDC-DCコンバータというのはアナログの設計技術が必要で、ノウハウがないとなかなか難しい。今後は自動車部品業界の地図がガラッと変わるのでは。当社はこれまで培ってきたデジタルとアナログの両方の技術を生かして、EV/HEV向け製品を提供していく」(担当者)。

EVに必要な“広い速度域での高効率駆動”――安川電機

 安川電機はモータドライブのパイオニアとして長年培ってきた技術を生かして、EV用モータドライブシステムを開発している。今回の展示会では、EVに必要な“広い速度域での高効率駆動”を実現する独自技術「QMETドライブ」を紹介していた。

 低速運転に適した巻線のモータを高速で使うと、モータ側の誘起電圧が上昇してインバータの直流電圧よりも高くなり、インバータ制御に支障をきたして高効率な駆動ができなくなる。

 QMETドライブは、巻線切り替え対応モータ、巻線を切り替える電子スイッチ、全体を最適に制御するインバータで構成。巻線切り替え対応モータは、低速走行時にはモータのすべてのコイルに電流を流し、必要なトルクをスムーズに発生させる。一方、高速走行時には一部のコイルだけに電流が流れるように巻線を切り替えることで、効率のよい運転を行うという。

画像5 QMETドライブの仕組み

 「ただしこの方法では低速運転から高速運転へ切り替える際に、両者のモータ特性の差からトルク変動によるトルクショックが発生してしまう。QMETドライブでは当社独自の電子スイッチ技術によって、ショックのないスムーズな切り替えを可能にしている。これにより、1機で2つのモータ特性を併せ持つモータドライブシステムを作り出すことができた」(担当者)。

 会場では、このQMETドライブを体感できる「QMETドライブシミュレータ」を設置。EVの運転席を模したシミュレータで実際にアクセルを踏み、低速走行から高速走行に遷移する際の変速ショックが発生しないことを来場者に実体験させていた。

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