ポイントは、この課題はすでに「根本原因」が分かっている問題であるという点です。
シックスシグマでは、多くの時間と工数を使って、根本原因を導く作業を進めていくことになります。しかし、今回の課題のように、「設計変更が頻繁に発生する」ことが根本原因としてほぼ間違いないと認識されているものを扱ってしまうと、ムダな時間と労力を掛けるばかりではなく、プロジェクトメンバーにも「何ですぐに解決策の検討に入れるのに、こんな面倒な手順を踏んでいるのか?」とモチベーションの低下を生み出します。
意識的に「本当にそれが原因なのか、検証をしたい!」という意図をもって進める場合には、もちろんその価値はあります。とはいえ、最小限の時間と労力で効果を得たいということであれば、スピード感のある、PDCAサイクルによる業務改善の手法や、業務のムダ取りに特化したリーン手法を用いる方が、より手法として適しているのは間違いないでしょう。
この例のような、「根本原因が分かっている課題に対してシックスシグマを使う」ケース以外によく見られる「使いどころの間違い」としては、次の3つが代表的な例として挙げられます。
QC活動で取り上げられるような、ボトムアップ型の現場改善にシックスシグマを使うのはあまり効果的ではありません。
シックスシグマは、「経営方針に結び付いた大きな改革目標」に対して「トップダウン」で降りてきた課題の解決が効果的に進むように設計されており、手順や手法は、多くの利害関係者を巻き込み、時間と労力をかけて大規模な改革を進めていくことを前提とした重装備型の方法論になっています。
小さな改善をシックスシグマで行うことも可能ですが、小さな改善効果では、掛けるエネルギーに対して割に合わないな、と感じることは間違いないでしょう。「いまより少しでもよくなれば十分」的な小さな改善を継続的に積み重ねていこう、という取り組みには、PDCAサイクルによる改善手法が、より適していると思います。
現状分析から入るシックスシグマのDMAICプロセスでは、これまでにない業務をどう分析していいか戸惑い、プロジェクトチームは困惑してしまいます。このような場合には、DMAICは使わずに、新製品や新プロセス設計に特化したシックスシグマ手法であるDFSS、またはプロジェクト管理の手法を活用しましょう。
シックスシグマは安定したプロセスを設計するための手順なので、継続したプロセスを持たない「新システム導入プロジェクト」といったものには適しません。このようなケースでは、プロジェクト管理の手法を利用する方が適切です。導入後に業務プロセスの安定化を図る必要を感じたら、PDCAやシックスシグマが活用できます。
これらを整理すると、シックスシグマ(DMAIC)は、
という4つの条件を満たす課題に対して有効な手法であり、これに該当しない課題は、もっとほかのふさわしい手法を検討した方がいい、ということになります。
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