本連載では、応援購入サービス(購入型クラウドファンディングサービス)「Makuake」で注目を集めるプロジェクトを取り上げ、新製品の企画から開発、販売に必要なエッセンスをお伝えする。第9回では、岩谷産業が開発する、カセットガス式で手軽に暖炉の雰囲気を楽しめるインテリア暖炉「MYDANRO」を取材した。
市場環境が変わる中、B2B事業で培った技術を生かして新たにB2C製品を作るモノづくり企業が増えている。大きなチャンスだが、今までと異なる機軸で新製品を作る上では大変な苦労もあるだろう。本連載では応援購入サービス(購入型クラウドファンディングサービス)「Makuake」のプロジェクトをピックアップし、B2C製品の企画から開発、販売に至るまでのストーリーをお伝えしたい。
製造業における新商品開発では、自社の技術や強みを生かしながら、市場に新たな価値を提供する製品を生み出すことが求められる。特に前例のない領域に踏み出す際には「この製品にニーズはあるのか」「本当に売れるのか」といった、上層部などからの厳しい問いや、組織内の反対意見と向き合わざるを得ない場面も多い。
こうした葛藤や課題を乗り越え、既存の商品技術を新商品に昇華させたのが岩谷産業だ。同社の主力事業である、家庭/業務用の「カセットこんろ」をはじめとするガス関連製品の開発で培った技術を応用し、2024年12月より、カセットガス式で手軽に暖炉の雰囲気を楽しめるインテリア暖炉「MYDANRO(マイダンロ)」の先行販売をMakuakeで開始した。同製品は焚火のような心地よい炎のゆらぎを眺めることはもちろん、本体天板のポットでお香やアロマウオーターを焚き、炎を見ながら香りを楽しむこともできる。
今回は、岩谷産業 マーケティング部 新商品開発担当の本山孝祐氏に、新製品開発の経緯や課題との向き合い方について話を伺った。
――カセットガス式で手軽に暖炉の雰囲気を楽しめる、というMYDANROのアイデアはどのように生まれたのでしょうか。
本山孝祐氏(以下、本山氏) 私はもともと営業部に所属していたのですが、2021年に新設された新商品開発部の責任者に任命されました。メンバーとイチからアイデアを出し合う中で、「炎を身近に感じられる製品を作りたい」という、温め続けてきた思いから生まれたのがMYDANROです。
私の幼少期には薪でお風呂を沸かしたり、父が掘った芋を焚火で焼いて食べたりするなど、炎が身近にありました。ゆらめく炎がもたらす安らぎや心地よさは唯一無二のものです。
しかし、現代では炎のある暮らしが減少し、その魅力を感じる機会が少なくなっていると感じています。そこで、キャンプに行かなくても自宅で安全に炎を楽しみ、リラックスできる空間を作る製品を届けたいという思いから、開発をスタートしました。
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