ツインインジェクタを採用した岡山大学の車両。1気筒に対して1つのインジェクタがオーソドックスな形といわれるが、この車両では2つ付いている。エンデュランス場内のアナウンスでは「明らかに、パワー狙いですね」と解説した。
一見、順調に走っているように見えた同校の車両に向かって、オレンジボールの旗が降られた。場内の審査員たちは、車両後部から出ていた紫がかった白い煙を見逃さなかった。オレンジボールの意味するところは「クルマをもう一度チェックするから、止まってください」。車両の走行中、何らかしらの異常(部品落下、エンジン異音、発煙・発火など)が審査員によって見出された場合だ。また、「リタイア」を暗に示す。一度オレンジボールを振られた車両は、よほどのことがない限り、コースで再走できない。
岡山大学のドライバは旗をすっかり無視して1周したのち、また旗が掲げられた際にストップ。車検の後、リタイアとなった。
「あのときは左折をするために、先のコーナーを見ていたので、右側に出ていた旗を見落としちゃったんです。2回目に旗が出たときは、減速していたので気が付いたのですが……」とそのとき車両を運転していた学生は話した。
岡山大学のチームリーダー 高橋直也さんは上記の発煙の原因について、「トランスミッションのトラブルです。ブロバイ(ブローバイガス)のせいでオイルが熱せられていました。ピストンがダメージを受けたことで隙間ができ、そこからオイルが漏れていました」と説明した。
高橋さんは今年の車両コンセプトについて、次のように述べた。「今年も昨年度同様、加速・旋回性能の向上と、軽量化、操作性向上を目指しました。サスペンションジオメトリも再考しました」 。
ツインインジェクタの採用の理由は、アナウンスで解説していたように「パワー」だという。ただ、やはりシングルと比べれば、設定が難しくなるとのことだ。それにパワーの大きさは、カーブの多いエンデュランスのような競技ではあまり生かせず、そこそこの出力となるようにとどめなければならない。
また電子制御シフトの採用も、同校の特徴。「ボタン1つでシフトチェンジできます。シフトも速くなります。エンデュランスでは、シフトアップダウンが多いため、速いシフトは重要だと思います」(高橋さん)
「エコパの走行コースの路面は、摩擦が小さく、滑りやすいです。ですから足まわりの整備は重要です。タイヤが路面に対して常に垂直に接するように意識しました」(高橋さん)
岡山大学は、デザインのスコアは総合5位以内の学校レベルでほかの静的審査項目もまずまずの成績だったにもかかわらず、アクセラレーションで苦戦し、エンデュランスのリタイアの失点も響いて、総合第32位となった。
最後に高橋さんは来年度に向けて、次のように述べた。「すべての種目の完走が、まず前提です。すべての競技でレベルアップし、去年よりも今年とレベルアップしていきます。方向性は今年でだいぶ固まってきましたから、そこに向かって頑張ります!」
次回も引き続き、大阪大学や横浜国大などの出場校を紹介しながら、学生たちをサポートする民間企業の方々も紹介していく。
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