ケースファイルAの場合はどうだったか。健康食品の製造プロセスは、秤量(ひょうりょう)→予製→調合→充填(じゅうてん)→包装→品管、というステップであった。さて、多様な新製品といえども、その多くは内容物は共通で、秤量から充填までのプロセスは同一だった。つまり、期せずして「部品の標準化」が行われていたわけである。充填直後の段階で需要量の統計を取ってみると、それなりに平準化されていることも分かった。
そこで、充填した直後の中間製品の段階で在庫を取り置きしておき(ここで品質検査も済ませておく)、営業の受注が決まった段階で包装だけして出荷することを提案した(図2)。このような中間製品を在庫しておく発想は従来なかったため、A氏は早速このアイデアを実現すべく検討に入ってくれた。また、調合工程を改造し、もう少し小ロットで切り替えを早くする案も進言した。
ご覧のとおり、計画上で在庫ポイントの配置を工夫することで、納期と在庫のトレードオフを、ある程度解決できる。もっとも、そのためには部品共通化(標準化)や平準化といった面での工夫も、同時に行われることが理想である。
ここまでご説明した在庫は、あくまで生産計画上、意図して置く在庫である。工場にはこれ以外に、意図せずに発生する「できちゃった在庫」がある。これは本来、ゼロにすることが目標である。計画在庫をうまく配置して、「できちゃった在庫」を駆逐することが、生産管理の知恵なのである(次回へ)。
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