作業のバラツキを減らしたいなら“シックスシグマ”失われた現場改善力を再生させるヒント(5)(4/4 ページ)

» 2008年05月07日 00時00分 公開
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実験計画法の効果

 このアプローチを使ってどうやってバラツキを減らしていくのかというと、DMAICの分析あるいは改善フェイズの原因仮説xへの対応方法に工夫があります。例えば、定量化したバラツキを図1のような分布としてとらえた場合、分布の幅の広さがバラツキを示しています。もし前回に説明した「なぜなぜ5回」による原因の深掘りによって、作業時間のバラツキの小さいAさんと大きいBさんとの違いを明らかにできれば早道ですが、大体のバラツキはいくつかの要因が複合したために大きく表れるのが普通です。これらの複合した要因の個別撃破を試みることは、それこそ“もぐらたたき”となってしまい、きっと真の原因を特定する前に適当に妥協したくなってしまうでしょう。

 そんなときに効力を発揮してくれるのが図2に示した「実験計画法」による要因の組み合わせ検証です。これを簡単に説明すると、結果Yに影響を与える複数の要因群xの各影響度合いを統計的な分析手法によって明らかにし、各要因がどういう組み合わせであれば、より目標値(分布)に近づくのかを予測します。つまり、より影響力の強い要因群はしっかりと管理し、外乱となる要因群を抑え込むことによって目標に対するバラツキを低減するのです。さらに詳しくは下記の参考文献を参照してください。

関連情報

図解コレならわかるシックスシグマ』(ダイヤモンド社)、ダイヤモンド・シックスシグマ研究会著、ダイヤモンド社(Amazon.co.jpより)


 前述のとおり「バラツキ」は、いろいろな要因によって起こり得ます。同じ作業者が同じものを同じように繰り返し測ったときの反復性もバラツキますし、違う作業者同士であれば再現性もバラツキます。このように単に測るだけでもバラツクのですから、ちょっとしたことで変動するような敏感な製品特性や調整作業だったら、なおのこと影響の大きい要因を確実に押さえなくてはなりません。

 さもなければ、多少の変動が含まれても最終的にバラツかない製品を設計する必要があるのです。この思想は「“ロバストネス(頑強性)”設計」と呼ばれます。生産現場で起こるバラツキに備えて、あらかじめマージンを持った設計を心掛けるということは、何にも勝る予防処置といえるでしょう。しかし、スペックアウトのような問題が起きてから対処するのではなく、問題になりそうなバラツキを見つけて先回りをすることは、現場を注意深く観察することからでしか始められないと思います。

 次回は本連載の最終回です。どうすれば製造現場から失われつつある現場改善力を再生し、現場改善活動を活性化できるのかを考えていきます。


筆者紹介

眞木和俊(まき かずとし)

株式会社ジェネックスパートナーズ
代表パートナー

GEでシックスシグマによる全社業務改革運動に、改革リーダーのブラックベルトとして参加後、経営コンサルタントに転身。2002年11月ジェネックスパートナーズを設立。日本企業再生を目指して企業変革活動の支援を推進している。著書に『図解コレならわかるシックスシグマ』(ダイヤモンド社)、『これまでのシックスシグマは忘れなさい』(ダイヤモンド社)などがあり、中国、韓国、台湾などでも翻訳出版されている。

 ジェネックスパートナーズ
お客さまとともに考え、ともに行動するパートナーとしての視点から「成果を創出できるマネジメント手法の導入」および「人材を競争力の源泉にするためのリーダー育成支援」を行うプロフェッショナルファーム。国内外を問わず幅広い企業、公共団体に対して、数多くの企業変革、人材教育の実績を持つ。



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