作業のバラツキを減らしたいなら“シックスシグマ”失われた現場改善力を再生させるヒント(5)(2/4 ページ)

» 2008年05月07日 00時00分 公開

“シックスシグマ”は日本発の定石手法だ

 さて本連載の第1回「御社の現場改善力、近ごろ鈍っていませんか」で、かつて筆者が在籍した外資系企業においてシックスシグマ活動の「ブラックベルト」を経験したとお話ししました。大変残念なことに、日本国内ではシックスシグマがメジャーな手法として扱われることは少ないのですが、実はシックスシグマはれっきとした日本原産の問題解決手法なのです。

 その経緯を少しだけご紹介すると、戦後復興から高度経済成長を支えた日の丸製造業の土台ともいうべき現場のQCサークル活動は、もともとエドワーズ・デミング氏(注3)などによって広められたことはご存じかと思います。1980年代に入り、日本製造業の台頭ぶりに脅威すら覚えた欧米の製造企業が、日本の製造現場の自律的改善活動をお手本にして編み出した手法の1つにシックスシグマがありました。


注3:エドワーズ・デミング氏(1900−1993) 米国の統計学者で、工業製品の統計的品質管理運動の提唱者。当初戦後日本に国勢調査員として派遣されたが、GHQの依頼で製造業復興を指導したことがきっかけとなり、日本の品質管理の祖として「デミング賞」に冠されるまでになった。


 世界的に見ると、シックスシグマとその発展形であるリーンシックスシグマは、いまや製造業のみならず一般企業における問題解決手法のグローバル・スタンダードとなりつつあります。米国や日本を除く東南アジア各国では政府主導の改善手法として定着しており、これらの外資系企業との取引において導入要請を受ける国内企業も増えつつあります。ある意味で改善手法の逆輸入現象といってもいいのかもしれません。このことについては、次回詳しく触れたいと思います。

 ここでシックスシグマのことを取り上げたのは、最も標準的な「バラツキ低減アプローチ」であるからです。シックスシグマの名前は統計用語の標準偏差を表す“シグマ”に由来するもので、統計的品質管理や品質工学(注4)の考え方をベースにしています。


注4:品質工学 田口玄一博士によって提唱された高品質と高生産性を実現するための技術的方法論。パラメータ設計による機能性評価と改善を中心とする手法。


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