ついに1学期最終回を迎えます。皆さん電子回路の基礎をマスターし、回路構成とその動作を思い描けるエンジニアを目指してください
前回は、1学期【期末考査】をお届けしました。
解けた方も解けなかった方も、次項の解答と解説をぜひ読んでみてください。
1問1問確実に理解しながら解いていけば、必ずやその知識が身に付くことでしょう。
それでは、解答を発表します!
第1問は、図1の回路のIBを0から変化させたときのICとVCEを調べる問題です。
IBとICの関係は、
となります。
またIBとVCEの関係は、
となります。以上の関係からIBに対するIC、VCEを計算したものを表1に示します。
図1の回路において、IBが50μA以上になるとトランジスタが開き切ってしまうため、ICは10mA以上に、VCEは0V以下に変化することができません。このような回路の状態を“飽和状態”といい、トランジスタをスイッチとして使用するときは、必ず飽和状態になるようにIBを流します。
第2問は、マイコンのポートでフルカラーLEDを点滅させる回路を設計する問題です。
フルカラーLEDは赤、緑、青(光の3原色)のLEDを1つのモジュールに収めたものです。LEDの特性から赤、緑LEDの順方向電圧VFを2V、青LEDのVFを3Vとして求めてみましょう。
最初にコレクタに挿入されている抵抗RCは、
となります。そして、各LEDに10mAの電流を流すために、R4、R5を「300Ω」、R6を「200Ω」とします。
IBは、
より、hFEを200にすると50μAと求められますが、トランジスタをスイッチとして使用するので、ここでは数倍の200μAとします。
ベースに挿入されている抵抗RBは、
より、VHを5V、VBEを0.7Vとすると「約20kΩ」と求められます。
第3問は、固定バイアス回路に関する問題です。
最初にバイアスを掛けるための抵抗RBを求めます。
図2のバイアス回路で、出力信号の振幅を最大にするために、VCEを=VCC/2となるようにIBを流します。
IBは、
となり、VCC=9V、RC=3kΩ、hFE=200のとき、7.5μAと求められます。
そしてRBは、
となり、「1.2MΩ」と求められます。
また、電圧増幅率AVは、
より、hFE=200、hie=3kΩのとき、「−200」と求められます。
第4問のオペアンプ回路は“比較回路”と呼ばれるもので、入力電圧と基準電圧を比較する回路です。
オペアンプは差動増幅器で、非反転入力の電位VI+と、反転入力の電位VI−の差を増幅します。つまり、増幅率Aのオペアンプの出力電圧は、
となります。
オペアンプの増幅率Aは非常に大きいため、小さい入力であっても出力は飽和してしまいます。
その結果、
が出力されます。
以上で、1学期の期末考査の解答と解説は終了です。また、今回をもって「完全マスター! 電子回路ドリル」の1学期が終了となります。本当にお疲れさまでした。
1学期は「電子回路の基礎知識」をテーマに出題してきました。皆さん、いかがでしたでしょうか? 前々回でも述べましたが、“電子回路を理解するには、何より「回路構成とその動作を思い描けること」が大切”です。そのためにも本連載で出題した問題に何度も挑戦していただき、基礎を押さえつつ、技のバリエーションを増やしてみてください。
最初は分からなくてもいいんです! あきらめずに何度もチャレンジすることが大切です。その努力が必ずやご自身の力になるはずです。そう「継続は力なり」ですから。
それでは皆さん、【2学期】の連載でまたお会いしましょう!
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