電気の高周波成分を通りにくくするという“コイル”。今回はコイルの役割の1つ「電流の変化の安定」について解説する
前回までで基本的な電子部品である、“抵抗器”と“コンデンサ”を紹介してきました。
今回のテーマは「コイル」です。
コイルとは、電線や銅線などの線材をらせん状に巻いた素子をいい、銅線に電流を流すことにより、いわゆる磁束を発生させます。
本連載の題材でもあるマザーボード(以下、M/B)、ASUSの「P5LD2」上には“丸い磁石の周りに銅線を巻いたもの”が搭載されています。これがコイルです(画像1)。
この素子は、コイルの中でも「トロイダルコイル」や「リングコイル」と呼ばれています。このコイルは、発生する磁束が外部に漏れないため、コイル効率がとても良く、磁束がほかの素子などに影響を与えにくいという特長があります。磁束がほかに影響を与えないという点では、トロイダルコイルがM/Bのようなさまざまな部品を搭載するボードに使用されているのは納得できる気がします。
コイルの特長は、“電気の高周波成分を通りにくくする”ことにあります。高周波成分を通りにくくする“抵抗器”と考えればよいでしょう。
抵抗器では、この抵抗値を「Ω(オーム)」という単位で表しましたが、コイルではこの抵抗を「インダクタンス」と呼び、その単位を「H(ヘンリー)」と呼ばれる単位で表します。
さて、コイルとはどんな役割を果たしているのでしょうか? 大きく分けると以下の4つが挙げられます。
それでは、これら4つの役割について見ていきましょう。
今回は、「電流の変化の安定」について解説します。
これは、いわゆる「レンツの法則」を用います。レンツの法則とは、ある閉じた回路を貫く磁束が時間的に変化するとき、その磁束の変化を妨げる方向に磁界を生じるような誘導起電力を生じるという法則です。
つまり、これは“銅線などに電流が流れようとすると、コイルは電流を流すまいとし、電流が減ると流し続けようとする性質”を意味します。
この性質を利用して、交流から直流に変換する電源の平滑回路によく使われます。平滑回路はコンデンサとコイルを組み合わせて使用すると、コイルが電流の変化を阻止しようと働き、コンデンサの入力電圧が0Vになっても、それまでに蓄えた電荷を吐き出すので、安定した直流を得ることができます。身近な例としてはACアダプターに使用されています。
さて、次回はコイルの役割「相互誘導作用」「電磁石」について解説する予定です。(次回に続く)
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