CAEの代わりにAIが解析結果を予測、設計者CAEを加速する深層学習用AI構築ツール:日本ものづくりワールド 2022
サイバネットシステムは「日本ものづくりワールド 2022」内の「第33回 設計・製造ソリューション展(DMS)」に出展し、日本での取り扱いを開始した深層学習用AI構築ツール「Neural Concept Shape」による設計強化アプローチについて訴求した。
サイバネットシステムは「日本ものづくりワールド 2022」(リアル展、東京ビッグサイト、2022年3月16〜18日)内の「第33回 設計・製造ソリューション展(DMS)」に出展し、2021年10月末に日本での取り扱い開始を発表した深層学習用AI(人工知能)構築ツール「Neural Concept Shape」(以下、NCS)による設計強化アプローチについて訴求した。
CAEの解析結果と同等レベルの予測結果を数秒から数分で
NCSは、スイス連邦工科大学ローザンヌ校発のスタートアップ企業であるNeural Conceptが開発するサロゲートモデルを構築するための深層学習ベースのソフトウェアである。深層学習技術によって、3D CADデータと解析専任者が実施/蓄積したCAEの解析データを学習し、専門知識や高度な解析機能を内包した学習モデルを構築することで、解析の知識に乏しい設計者であっても、解析専任者レベルのシミュレーション結果をスピーディーに予測できるようになる。
「通常のCAEツールを用いたシミュレーションで数時間かかるような解析でも、NCSであれば、CAEの解析結果と同等レベルの予測結果を数秒から数分で取得できる」(説明員)。このような導入効果が得られることから、欧州を中心に多くの企業で採用が進んでいるという。
深層学習というと、大量の画像データを学習して画像認識などに用いられる2次元的な活用が一般的だが、NCSではコア技術に3次元の畳み込みニューラルネットワーク(3D Geometric Convolutional Neural Network)を採用することで、入力された3次元形状の幾何学的特性を忠実に学習すると同時に、高精度な物理シミュレーションの3次元分布結果も学習できる。その結果、構築された学習モデルに対して、設計者が直接新規の3次元形状(STLデータなど)を入力することで、その新規形状に基づいた3次元分布結果を予測できるという。さらに、NCSでは形状最適化機能と連携し、最適な形状を短時間で効率的に探索することが可能だとし、設計プロセスの変革にもつなげられる。
「従来のフローだと、設計者は設計意図を解析専任者に伝え、解析専任者は解析結果を分かりやすく設計者に説明する必要があり、非常に手間と時間がかかっていた。また、CAEのデータも日々たくさん作られる割に、類似した解析の際に参照する程度でほとんど価値を生み出していなかった。NCSを活用すればこうした煩雑なやりとりから解放され、CAEデータを価値に変えることができる。設計者自身もAIを活用することで時間的な制約を気にすることなく、好きなだけ設計案の検討が行えるようになり、開発期間の短縮や製品品質の向上にもつなげられる」(説明員)
NCSは、クラウド上のWebアプリケーションとして提供されるため、高性能なPC環境を用意する必要はなく、インターネット接続環境さえあればどこからでも利用できる。実際の導入までのプロセスについては、サイバネットシステムの専門部隊が導入立ち上げまでを一貫してサポートし、コンサルティングから解析データの収集、PoC(概念実証)、実導入までをカバーする。
「近年、AIを用いてCAEの解析結果を予測するアプローチは高い関心が示されているが、まだ検討段階、PoCレベルで本格的な活用事例も少ない状況にある。NCSの国内展開を進めながら、顧客と一緒にノウハウを蓄積していければと考えている」(説明員)
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