われわれは貧困化している!? 労働賃金減少は先進国で日本だけ:「ファクト」から考える中小製造業の生きる道(1)(2/4 ページ)
苦境が目立つ日本経済の中で、中小製造業はどのような役割を果たすのか――。「ファクト」を基に、中小製造業の生きる道を探す本連載。第1回では、労働賃金が下がり続ける日本の現状について紹介します。
労働者が貧困化しているという衝撃
まず私が最もショックを受けた統計データを紹介します。図1をご覧ください。
このグラフは、日本人労働者の平均給与の推移です。青が男性、赤が女性、緑が男女合計のグラフを示しています。日本人の労働者は、1997年までは右肩上がりで平均給与が増加していましたが、1997年をピークにして減少に転じています。直近では増加傾向ではありますが、まだピーク時を超えているわけではありません。
つまり、日本人労働者の平均給与が下がっており、貧困化しているといえるのです。日本も他の先進国同様に、経済成長を続けていると考えていましたが、実際に統計を見てみると、このようにショッキングな事態に陥っています。
労働者と一言でいっても、消費者としての面、納税者としての面、家族の一員としての面など、さまざまな側面を抱えており、そもそもが国民の一員です。その国民一人一人の収入が減っているというわけですから、人口がそれほど大きく増えているわけではない日本という国の収入が減っていることが分かります。
具体的に数字を見ていきましょう。例えば、男性労働者の平均給与は、1997年は577万円だったのが、2019年では540万円と実に約40万円も減少しています。2020年はコロナ禍が直撃していますので、最新データが出れば、おそらく減少に転じていることでしょう。
ただ、グラフをよく見てみると、男性に比べると女性は、やや停滞しているものの上昇基調にあります。どうやら主に男性労働者に異変が起きていることが分かります。
図2をご覧ください。
図2は日本の男性労働者について、企業規模や年齢層別に平均給与をグラフ化したものです。
少し説明が必要かもしれません。グラフは30歳未満、30代、40代、50代、60代の年齢層別、中小企業、中堅企業、大企業の企業規模別でグラフ化しています。企業規模については、本来正式な定義がありますが、統計データを整理する都合上、今回は便宜的に、中小企業を100人未満、中堅企業を100人以上1000人未満、大企業1000人以上と定義しています。
横軸が、そのカテゴリーの人数、縦軸が平均給与を示しています。そしてそれぞれのカテゴリーの矢印が、1999〜2018年の変化を表しています。矢印の起点が1999年の状態、矢印の先端が2018年の状態を表しています。
これを見ると、40代と60代の人数が大きく増え、30歳未満の人数が大きく減っているのが分かります。ただ、それ以上に重要なのが全ての矢印が「下向き」であることです。男性労働者は、企業規模、年齢層関係なく、みんな給与が減っているのです。日本経済の中で、男性労働者にはいわゆる「勝ち組」がなく「総じて貧困化が進んでいる」というのが統計から見る実態のようです。
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