われわれは貧困化している!? 労働賃金減少は先進国で日本だけ:「ファクト」から考える中小製造業の生きる道(1)(3/4 ページ)
苦境が目立つ日本経済の中で、中小製造業はどのような役割を果たすのか――。「ファクト」を基に、中小製造業の生きる道を探す本連載。第1回では、労働賃金が下がり続ける日本の現状について紹介します。
労働者の収入が減っているのは日本だけ?
それでは、労働者の収入が減っているのは、日本だけの現象なのでしょうか? 他の国はどのような状況にあるのかを確かめていきましょう。
多くの統計データを見てきて感じるのは、日本国内の統計データを見ているだけでは、その数字の意味を本質的には把握できない、ということです。同じような先進国の傾向と相対化し、見比べてようやく、日本で起きていることが見えてきます。この連載では、主に先進国に分類される国々で構成される「OECD(経済協力開発機構)」のデータで国際比較をしていきたいと思います。
図3は平均給与の推移を国別でグラフ化したものです。
他国と比べる際には、通貨や人口が異なりますので、比較できるように単位や水準を統一しなければいけません。私が、最も実態に即した比較ができると考えるのは、「1人当たり」の「名目値」「ドル換算」の数値です。
物価の変化を踏まえた「実質値」を使うのが経済学的には一般的なのかもしれませんが、デフレで名目値の成長が必要な日本の状況からすると、まずは名目値の変化に着目する必要があると考えます。ドル換算値は、それぞれの国の通貨とドルとの為替変動の影響を受けます。米国以外の国のグラフがジグザグになっているのは、主にこの為替の影響によるものです。少し見にくいかもしれませんが、傾向は把握できるのではないでしょうか。
さて、図3を見ると日本(青)はほぼ横ばい傾向ですが、米国をはじめ他国は、傾向的には右肩上がりのグラフになっています。1990年代に上の方にあった日本の位置は、最近では他の国に抜かれて中位に埋もれています。
さらに、こうした傾向をより分かりやすく示すために、ある年だけで切り出して、数値の高い順に並べたデータを見てみましょう。
図4は2019年の数値を基にしたグラフです。
これを見ると、日本の平均給与は4万384ドルでOECD35カ国中20番目の水準です。米国の6万5836ドル、ドイツの4万7490ドルなどと比べると大きく差をつけられています。G7の中では6番目、OECDの平均値である4万1457ドルにも届かないレベルとなっています。実は、世界で3番目の経済大国であるはずの日本の労働者の所得水準は、先進国の中では平均値未満のグループに属しているということが分かります。
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