新社長の内田氏が語る、日産のこれから:製造マネジメントニュース
日産自動車は2019年12月2日、横浜市の本社で会見を開き、同月1日付で代表執行役社長兼CEOに就任した内田誠氏が抱負を語った。
日産自動車は2019年12月2日、横浜市の本社で会見を開き、同月1日付で代表執行役社長兼CEOに就任した内田誠氏が抱負を語った。同氏は「日産の経営や事業の戦略に誤りがあったとは思わない。ただ、できないことをできるといわせる文化が生まれてしまった。新体制では、透明性をもって社員と課題を共有し、お客さまやサプライヤー、販売店を含めた社内外の声に耳を傾ける風土を作っていく」とコメント。また、将来の成長戦略として、新技術や新製品の開発を軸に据えることを強調した。
日産自動車では、2019年9月に西川廣人氏が代表執行役CEOを辞任、山内康裕氏が一時的に代行を務めた。その後、同年10月に、内田氏を代表執行役社長兼CEO、三菱自動車のCOOだったアシュワニ・グプタ氏を代表執行役兼COOに、専務執行役員だった関潤氏を執行役副COOとする新体制を発表した。内田氏は商社を経て2003年に日産自動車に入社、アライアンスでの共同購買でキャリアをスタートさせた。直近では、中国マネジメントコミッティの議長と東風汽車の総裁を務めた。
内田氏は「日産は社員一人一人の能力が高く、グローバルな価値観で多様性を受け入れ、目標を信じて前に進む力があった。技術面だけでなく経営でもブレークスルーを起こせる会社だった。アライアンスは日産の成長に大きく貢献し、部品や資材の共同購買、車台や部品の共通化、人材の活用などで幅広い成果を上げた」と評価しつつ、完成検査問題や経営層の不正により、事業の運営上の問題やガバナンスの脆弱性があったと反省した。
“できないことをできるといわせる文化”については、「ハードルの高い目標の達成に向けて短期的な成長を求めた行動を引き起こし、自発的な横の連携や問題解決の意欲をそいでしまった。また、将来の技術や製品の開発、設備や人材への投資にも影響を及ぼした。北米の過剰な販売インセンティブもその一例だ」(内田氏)と振り返った。
新体制では、尊重、透明性、信頼性の3つを重視し、「部下を信頼し、部下に権限移譲できる会社、役員や従業員全員が自分のこととして会社を捉えるワンチームとなる風土を醸成し、透明性の高い業務運営を行う。企業体質として浸透するよう、リードしていく」(内田氏)と語った。
新車や新技術を軸に成長
日産自動車は、2022年に向けて米国事業の立て直しや、投資効率の適正化、新製品や新技術を軸にした着実な新車開発を行う中期経営計画「NEW NISSAN TRANSFORMATION」を2019年5月に発表している。内田氏は「この基礎を実行に移していく」という姿勢を強調した。
「この計画はリストラとみられがちだが、新商品や新技術を軸にした将来の成長戦略を描いている。適切なタイミング、適正な価格でお客さまに商品を提供し続ける体制を整える。この中でアライアンスの活用は欠かせない。独立性を保ちながら活動を続ける。経営統合は現時点では考えていない。売り上げや利益といった各社のメリットを重視し、何がうまくいっていて、何がうまくいっていなかったか議論していく。各社の課題に手を打ち、本来のアライアンスの機能でビジネスに貢献していく」(内田氏)
2022年に売上高14.5兆円、営業利益率6.0%以上の達成を目指す同計画の経営指標が現実的であるかどうかについては、「置かれた環境に応じて策定する必要がある。何ができるか、もう一度議論してしかるべきタイミングで発表したい」(内田氏)とコメント。事業の進め方や目標設定に当たっては、現状の認識と伸ばし方や伸びしろに関する議論を尽くし、チャレンジできる目標を設定することが重要だとしている。
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