日産自動車は2020年春から次世代版の「インテリジェントルームミラー」を展開する。カメラの高画質化やディスプレイの画素密度向上、4枚の画像を合成するハイダイナミックレンジ(HDR)によって、夜間の視認性を特に高めた。
日産自動車は2020年春から次世代版の「インテリジェントルームミラー」を展開する。カメラの高画質化やディスプレイの画素密度向上、4枚の画像を合成するハイダイナミックレンジ(HDR)によって、夜間の視認性を特に高めた。画素密度としては50型の8Kディスプレイに相当するという。インテリジェントルームミラー単体の価格は公表していないが、コスト面は「消費者が払う価格は従来と大きく変わらない」(日産自動車の担当者)という範囲に収めた。
次世代版は従来と同様にレバーでミラーとカメラ映像の表示を切り替えることができる。車両後方に設置するカメラは、従来は解像度が1.3メガピクセルだったが。次世代版では2.6メガピクセルのカメラを採用する。ディスプレイの画素密度は現行の100ppiから162ppiに高めた。カメラのダイナミックレンジは100dBから120dBに拡大している。
明暗差が激しい場所での白とびや黒つぶれを防ぐHDRは、これまで1フレーム当たり2枚の画像を合成していたが、次世代版はLEDフリッカー低減にも対応するため1フレーム当たり4枚の画像を合成する。これにより、車両のLEDランプのちらつきが抑えられ、夜間でも見やすくなる。「夜間の画質の低さは開発した本人としても気になっていた。どうしても改善しなければならなかった」(日産自動車の担当者)。
次世代版インテリジェントルームミラーの外形寸法は現行製品よりも小さくなり、通常のルームミラーと同等のサイズになった。サイズはルームミラーとしては大きすぎるのではないかという声を反映した。ただ、「この大きさがいいという声もあり、市場の反応を見てみなければ分からない部分もある」(日産自動車の担当者)。ディスプレイは従来よりもフレーム部分を狭くしている。ミラーとしては小さくなったが、カメラによってミラーよりも広い後方視界が得られる。
現行のインテリジェントルームミラーの開発は、従来のルームミラーとしての部分を市光工業が、カメラの映像を投影する電子ミラーとしての機能をパナソニックが分担した。次世代版のサプライヤーはパナソニックのみとなる。パナソニックは2017年にミラーを手掛けるスペインのサプライヤー、フィコサ・インターナショナルを連結子会社化したが、開発は日本で日産自動車とパナソニックで進めたという。
日産自動車とパナソニックは、パナソニックが日産自動車以外の自動車メーカー向けにも提案することを前提に開発を進めた。「採用するチップからインテリジェントルームミラー向けに新開発した。半導体を新しく用意するという事はサプライヤーの投資額が大きくなるが、日産の台数規模だけではコストを下げられない。新しいインテリジェントルームミラーは日産とパナソニックの共同開発だが、パナソニックはどこに販売してもいいという条件で製品化した」(日産自動車の担当者)。
日産自動車とパナソニックは、サイドミラーをカメラに置き換えることも視野に入れて次世代版インテリジェントルームミラーを開発した。「改めて調べる必要もないほど、関連する法規は余裕でクリアできる性能だ」(日産自動車の担当者)と自信を見せる。また、インテリジェントルームミラーと画像認識技術を組み合わせることも検討中だ。後方車両との車間距離が急激に縮まっている場合や、緊急車両が接近しているときにドライバーに注意喚起したり、特定の状況をドライブレコーダーの録画のトリガーにしたりすることを想定している。
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