モビリティ革命の推進力、日本の交通に変化をもたらす4つの先進的取り組み:交通政策白書を読み解く(後編)(4/6 ページ)
国土交通省は2019年6月に「平成30年度交通の動向」及び「令和元年度交通施策」(以下、交通政策白書2019)を公開した。今回は「モビリティ革命〜移動が変わる、変革元年〜」をテーマに、交通の動向や交通に関する施策を紹介している。
自動運航船
自動運航船とは、定まった定義はないが船上の高度なセンサーや情報処理機能、セキュリティの確保された衛星通信、陸上からの遠隔サポート機能などを備えた船舶およびその運航システムのことを指す。認知や判断の段階のエラーを減らす操船支援技術などによって、人為的要因により発生する海難事故を未然に防ぐことなどが可能となり、運航における安全性、経済性の向上が期待されている。
交通政策白書2019では、自動運航船の開発と実用化と高度な予防保全などの自動運航船を軸とした新たなサービスの提供は、日本の海事産業にとって新しい差別化要素をもたらすものとしており、このため、国土交通省では、2025年までの自動運航船の実用化に向けたロードマップを指針として、技術開発と実証、基準や制度の整備を両輪とする取り組みを強力に推進することを紹介している。
特に2018年度から取り組んでいる自動運航船の実証事業はその代表的な取り組みであり、産学官から幅広いプレイヤーが参画し、安全要件の策定などの自動運航船の実用化に必要な環境整備に向けて、日本の技術と知見を結集して取り組んでいる(図6)。
鉄道の自動運転
鉄道における自動運転は、これまで人などが容易に立ち入ることができない新交通で実現しており、踏切のない高架構造物などであること、駅にはホームドアがあること、自動列車運転装置が設置されていることなどの要件が技術基準などで定められている。
一方で、踏切があるなどの一般的な路線においては、安全安定輸送の観点から自動運転の導入は実現していない。このような一般的な路線を対象として、センシング技術やICT、無線を利用した列車制御技術などの最新技術も利活用し、安全性や利便性の維持、向上を図るための技術的要件について検討を行うため、2018年12月に「鉄道における自動運転技術検討会」を立ち上げた。運転士の乗務しない自動運転の導入は、鉄道分野における生産性革命にも資することから、引き続き、同検討会において技術的要件について検討することとされている(図7)。
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