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尿毒素を吸着するナノファイバー、災害時に役立つ“携帯型透析システム”の実現へ材料技術

物質・材料研究機構(NIMS)は、尿毒素を選択的に吸着する高性能ナノファイバーメッシュを開発した。災害時において電気や水などのライフラインが寸断された際、慢性腎不全患者に応急処置を施す“携帯型透析システム”の実現に期待がかかる。

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 物質・材料研究機構(NIMS)は2014年2月、血中の尿毒素の1つであるクレアチニンを選択的に除去できる高性能ナノファイバーメッシュを開発することに成功したと発表した。同ナノファイバーメッシュは、災害時において電気や水などのライフラインが寸断された際、慢性腎不全患者に応急処置を施す“携帯型透析システム”の開発に役立つとしている。

 透析液を大量に使用する従来の透析治療は、インフラが整備された医療用設備が必要で、ライフラインが断たれた状態では、尿毒素を除去することは困難だった。

 今回、ナノファイバーの高い比表面積とゼオライト(鉱物)の尿毒素吸着能という2つの性質を組み合わせることで、血中尿毒素を選択的に除去できるナノファイバーメッシュを開発したという。

 開発したのは、腕時計型のカートリッジに取り付け可能なメッシュ状の材料で、ゼオライトを含有した生体適合性高分子のナノファイバーからなる不織布だ。使用したゼオライトは、尿毒素を選択的に吸着できる。人間の体内には1時間で約50mgのクレアチニンが蓄積するが、今回開発したナノファイバーを25g使用することで、それを除去できたという。ゼオライトの種類を変えることで、さまざまな種類の尿毒素を除去できると期待されている。


腕時計型の尿毒素除去システム。腕時計の部分に、ゼオライトを含有したエチレンビニルアルコール(EVOH)からなるナノファイバーが装着されていて、これが尿毒素を吸着する仕組みになっている 出典:NIMS

災害時の応急処置に貢献

 日本国内の慢性腎不全患者は30万人を超え、年間約2兆円規模の医療費がかかっている。ほとんどの患者は血液透析などの血液浄化法により、延命や社会復帰しているのが現状だ。

 地震などの災害によってライフラインが断たれた場合、復旧までの間に、急性尿毒症を予防するには、体内から尿素とクレアチニン、水を速やかに除去しなくてはならない。2011年の東日本大震災の際には、ライフラインの寸断によって透析治療が困難になり、患者は被災を免れた施設への移転を余儀なくされた。今回の開発成果は、こうした事態を解消できるものとして期待される。

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