コマニーは1984年に「コマツパーティション工業」から「コマニー」に社名を変更している。社名変更の一番の理由は「『パーティション屋さん』から『空間価値を提供する会社』に脱皮したい。そのためにはパーティションの文字を社名から外そうと考えた」とコマニー 取締役 専務執行役員の塚本直之氏は説明する。
パーティションは、製品の特性上、顧客からのニーズに合わせた製品を作ることが多い。しかし、パーティション自体の性能では各社間で差が出せないため、定型品を販売するだけでは、価格競争に陥る。そこで「間づくり」というコンセプトの下、パーティションを使用する前段階の空間の構想や企画から入る事業形態を考えたという。
実際に、石川県小松市の本社に伺うと、パーティションを作る製造業という雰囲気をほぼ感じない。例えば、本社に入ると、黒を基調とし、天井裏を吹き抜けにした落ち着いた空間が出迎えてくれる。
会議室も、居心地の良さを狙った空間演出を行っている。例えば、白いパーティションを黒の目地で留めることで、白だけの壁に比べて、緊張感を和らげる効果をもたらしているという。
また、廊下側は、曇りガラスにしつつ下部2割程度は透明とし、会議室内の動きが外から見え、内部からも廊下を歩く人の気配を感じられる。さらに、玄関側の光が、部屋の中に自然と入ることで、締め切った会議室の無機質な空間を和らげている。これらは「全て快適な『間』を提供するための経験を意図的に取り入れたものだ」と塚本氏は説明する。コマニーのオフィスそのものが、「間づくり研究所」を持つショールームになっている。
コマニーでは、2019年に「間づくり」という言葉を経営理念に掲げ、2023年4月に「間づくり研究所」を創設した。全社員を研究所の所員とし、間づくりについての研修も始めたという。「間づくり」を所員全員(つまり全社員)が考えることで、さまざまな提案が出てくる。全員が研究所員であり、会社の部署や上司にとらわれることなく、フラットな関係性の中で発言できる。
「間づくり」の考え方は、デザイン思考がベースである。まず、ユーザー観察を徹底的に始める。ユーザーが望むことは何かを考え、どういう空間を作りたいのかを一緒になって考え提案する。そのために、社内も実験環境として活用している。社員が働きやすい「間」を作り出すことで、結果として「間づくり」の経験値を積み上げ、さらには顧客に対して訴求力の高い提案ができるようにしている。そして、オフィスにおける間づくりに加え、モノづくり企業であるからこそ有している製造現場である工場での間づくりの提案にもつながっている。
例として「間づくり研究所」の提案により作られた、パーティションで囲まれた工場内の3カ所の空間を見せていただいた。これは、建物(工場)の躯体から離れた工場内の「間」である。その「間」に対して3つの使い方を提示している。
1つ目は、休憩室としての使い方だ。コーヒーメーカーやテレビ、ソファが設置され、工場の中にいながら、エアコンの効いたカフェでくつろぐことができる。工場現場から物理的に「間」で仕切ることで休憩の質をあげ、さらには、社員間のコミュニケーション活性化が自然に起きる環境としている。
2つ目は、オフィスとしての使い方である。物流センターとして作られた工場内オフィスとして活用されており、コマニー社員と物流業者(協力会社)2社が同居している。工場内にガラス張りのオフィスを作り、3社が同じ空間を共有することで、運んでいる製品の製造工程を担う人たちとの距離感を縮めるだけでなく、会社間も、情報の「断絶」から「共有」という関係に変わる。「間」を作ったことで、競争関係にある2社の関係性も飛躍的に変わったそうである。その結果、互いの立場を理解しながら協力できる共創空間が工場内に生まれた。
そして、3つ目は生産ラインの隅にある作業場を兼ねた休憩室だ。途中休憩に加え、ここでは、当日の作業を終えて業務日誌を書くなどの事務作業ができる。ともすれば資材等で雑然とする工場環境ではなく、事務環境という仕事内容に適した「間」を提供することで気持ちの切り替えを行い効率的な作業が実施できる空間としている。
さらに、オフィスには、オープンなフロアをベースにしつつも、いくつかの机の周りに、フレームが立った場所がある。これは、フレームを立てることで、空間が仕切られているかのような精神的な安心感を醸し出しているそうである。そこでは、机だけを置く場合と異なり、人々が集い、会話が生まれる空間が作りだされている。フレームというちょっとした仕切りを立てるだけで、より空間の守られ方が高まっている。間を作ることが得意なコマニーは、壁を作らなくても間を作ることができるのである。
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