現在、日本でもフィジカルAIやVLA(Vision Language Action)モデルの構築に取り組む企業が増えているが、米国や中国がこれらに求めている期待値と日本が求めている期待値には大きなギャップが生まれているという。イ氏は「現在の日本は初期的な段階にとどまっている。中国や米国ではいかに早く実際の現場にデプロイして、人間の作業を代替できるのかという実用的なフェーズに突入している」と分析する。
2026年の上半期と下半期だけでも顧客からリアルワールドに寄せられる問い合わせの質が変化しており、「何年以内に実際の現場に導入できるのか」「スループットと実際の稼働時のタスク成功率は何%なのか」といった、実際の現場での稼働や速度、経済合理性を前提とした問い合わせが多くなっているという。
米国のロボティクススタートアップであるFigure AIによる宅配ソーティングのデモンストレーションでは、人間とロボットの作業時間(サイクルタイム)を比較した際に、人間がサイクルタイム2.79秒だったのに対し、ロボットのサイクルタイムは2.83秒を記録し、人間と機械の差がわずか0.04秒にまで縮まっていることが判明した。2026年7月に中国の上海で開催された「世界人工知能大会(WAIC) 2026」では、中国Roboteraが独自開発した基盤モデルにより、高速なハンドリング作業を実現し、注目を集めた。
「WAICでも5本指ハンドで作業をするロボットは10%程度しかおらず、まだこの分野ができる企業は少ないことが分かった。また、手の動きや触覚のデータを集めることができるデータグローブや外骨格製品は、前年比で5倍も増えており、5本指ハンドに注目が集まっている」(イ・フン氏)
リアルワールドは人間のような作業速度と正確さを求めて、1個のモデルでさまざまな製品をつかむことができる汎用性の高い基盤モデルの研究開発を進めている。現在は宅配ソーティングに関するデモンストレーションを実施するために準備を進めており、独自開発の基盤モデルでデプロイができるようにモデル性能の向上を目指している。
イ氏は「宅配ソーティングのサイクルタイムで約3秒を実現するなど、人手に近い性能を出すことができる会社には共通点がある。それは、自社開発した独自モデルを活用していることである。オープンに活用できるモデルは性能が限定されており、現場実装まで持っていくのは難しい。そのため、独自モデルを開発して改善を続けない限り、実際の現場導入や人間の作業の代替はできないと認識している」と自身の考えを述べた。
動きを先読みして触覚で状況を判断 新たなロボット基盤モデル「RLDX-1」とは
ロボットの費用対効果が3年以内に人手を上回る――インテルが調査結果から洞察
フィジカルAIに注力するインテル、組み込み市場での約40年の実績を生かせるか
NVIDIAとトヨタ自動車、フィジカルAI活用で車両/工場/都市を連携
フィジカルAI時代のロボティクス新標準、安全性は「後付け」でなく「設計の核心」
“3つの頭脳”で80TOPSの処理性能を実現 AMDが語る「次世代AIチップ」戦略Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
組み込み開発の記事ランキング
コーナーリンク