機械設計者が思わず「簡単に言うなや!」と身構える要求6選【後編】設備設計現場のあるあるトラブルとその解決策(17)(1/2 ページ)

連載「設備設計現場のあるあるトラブルとその解決策」では、設備設計の現場でよくあるトラブル事例などを取り上げ、その解決アプローチを解説する。連載第17回は、機械設計者が思わず「簡単に言うなや!」と身構えてしまう要求6選の後編として、産業用ロボットの活用、メンテナンスフリー、出荷前状態の完全再現という3つの要求を取り上げる。

» 2026年08月27日 08時00分 公開

こんな人にオススメの記事です!

設備設計現場のあるあるトラブルとその解決策
  • 設備設計の品質問題や手戻り作業の多さに悩んでいる方
  • 設備設計に関するスキルアップを図りたい方
  • 信頼される設備設計者を目指したい方

 本連載は、前回シリーズ「いまさら聞けない 製品設計と設備設計の違い」をイントロダクションと位置付け、設備設計の現場でよくあるトラブル事例などを紹介し、その解決アプローチを解説していきます。

今回のテーマ:機械設計者が思わず「簡単に言うなや!」と身構える要求6選

 今回は前回に引き続き、機械設計者が思わず「簡単に言うなや!」と身構えてしまう要求を紹介します。【後編】では、残る3つの事例を取り上げていきます。

事例(4):ロボットを使っていい感じに

 生産設備には、「専用機=エンドユーザーの要求を満たすように特化させた機械/システム」の他、「汎用(はんよう)機=幅広い用途に使用可能な機器をメインに、周辺機器と組み合わせて使用する機械/システム」があります。

 汎用機の代表例の1つが「産業用ロボット」です。

 中でも垂直多関節ロボットや協働ロボットの需要が高く、ロボットの先端軸にエンドエフェクター(ロボットハンドなど)を取り付けることで、ワークに対して多彩な仕事をさせることが可能になります。

 ロボットのティーチング/動作プログラム次第で柔軟に位置決め/動作などができますし、展示会でも「カメラを使って自動認識」「AI(人工知能)を使ってティーチング削減」などとアピールされている場面をよく見かけます。そのため、あたかも「このロボット1台があれば何でもできる」とついつい感じてしまう方も少なくありません。

 また、自動化がほとんど進んでいないような現場の担当者の方にとって、産業用ロボットは「自動化/機械化の象徴」のように感じられるようです。

 中には「投資対効果とかよりも、とにかくロボットを導入してみたい!」という方もいるほどで、筆者自身、「総合的に考えて専用機で十分ですよ」と提案しても、「いやー、ロボットとか使ってー」と顧客から要望された経験があります。

 ですが、実際にロボットを扱ったことがあるエンジニアからは、「いやー、それは過大評価だよ」という声もよく聞きます。

 その理由としては、次のような事情が挙げられます。

  • 確かに専用機と比べると動作の自由度は高いが、ロボット本体にも可動範囲の制限がある。特に最大リーチ付近では、取れる姿勢や動作方向がかなり限られる
  • 片持ち構造である関係上、最大リーチ近くではたわみやすい。特に可搬重量近くの条件では顕著になる
  • ロボット本体は比較的自由に動けたとしても、エンドエフェクターとロボット本体との干渉や、エンドエフェクターへの配線/配管の関係で動かせない動きがある
  • 導入コストが高い割には、サイクルタイムがそこまで短くならないことも多い
産業用ロボットは「万能」ではない 図1 産業用ロボットは「万能」ではない[クリックで拡大]

 そのため、顧客からの引き合いを受けてロボットシステムを設計したものの、いざ装置の見積もりを提出してみると、顧客が装置導入を渋るというケースは、筆者の経験上も結構あります。

事例(5):点検やメンテナンスはしなくてもいいように

 装置納入後に顧客から「装置の改造について相談したい」などの問い合わせを受け、現状の装置の状態確認も兼ねて設計者が現場を訪問するケースがしばしばあります。

 これは自動機の取り扱いに慣れていない現場でありがちなのですが、装置の現状を確認すると、全く清掃/メンテナンスされていないケースも珍しくありません。

 装置の中をのぞくと、例えば次のような状態になっています。

  • 架台下にワークの破片などがかなりたまっている
  • カバー表面やエアーのサイレンサーにほこりや汚れ、シミなどがかなり付いている
  • エアーのドレンが満杯状態
  • グリスが全然充填(じゅうてん)されていない
  • センサーの受光面がかなり汚れている
メンテナンス不足で起こること…… 図2 メンテナンス不足で起こること……[クリックで拡大]

 一応、装置の納入時に点検マニュアルのようなものを作って渡したり、現地訪問した際に顧客へ念押ししたりするのですが、結局やる習慣がなかったり、そもそも点検する担当者を決めていなかったりするケースが多いです。

 そして、次のプロジェクトの話になった際に言われるのが、「そもそも点検やメンテナンスをしなくてもいいようにできないんですか?」というものです。

 気持ちは分からなくもないのですが、点検やメンテナンスをなしにするというのは実際かなり難しい話でしょう。

 これは皆さんの身の回りにある機械について考えてみてほしいのですが、自動車でも定期的な点検や消耗品の交換が必要ですし、駅構内などでは改札機、エスカレーター、エレベーターなどが定期的に点検されていますよね。

 つまり、機械の多くは、その寿命を長く保ちつつ安全に利用できるようにするため、定期的な点検やメンテナンスを行っています。

 これは自動機にも同じことが言えます。

 もし点検やメンテナンスを一切行わないとなると、早期故障につながるだけではなく、機械故障の範囲や影響も大きくなっていきます。気付いたころには、取り返しがつかないレベルにまで故障してしまう場合もあるのです。

 そうなれば、故障した部分ごと交換が必要になり、メンテナンス費用が大きく膨らむ可能性もあります。

 機械による自動化を実現し、省人化/無人化ができたとしても、点検やメンテナンスをするための人は必要だという点は認識しておきたいですね。

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