こうして誕生したのが、SKUごとの損益可視化ツールと、シミュレーター「C-BOSS」である。両者は別システムであるが、全社最適な意思決定を実現するという目的のもとで相互補完的に機能している。
「損益可視化ツールは、過去から現在までの実績をBIツールで可視化し、商品ごとの原価や利益構造の改善を促す仕組みです。一方のC-BOSSは、未来の供給計画をシミュレーションして、着地利益の予測と最適化を行います。実績方向と未来方向の双方から収益を把握する設計になっています」(大江氏)
C-BOSSには、生産キャパシティーやばれいしょの収穫可能量に加え、製造経費、輸送費用、原材料費などのコスト情報をマスターデータとしてセットしておく。そこにマーケティングや営業視点の販売見通しをインプットすることで、いかに最小のコストで供給できるかという最適化計算が働き、売り上げ、利益、稼働率、全社の在庫見通しなどがアウトプットされる仕組みだ。
このプロセスには、AI(人工知能)の技術も組み込まれている。
「機械学習を用いた定番商品の需要予測データをシステムに連携している他、ばれいしょの歩留まり予測などにも機械学習の取り組みを進めています。また、大量のデータを処理して最適化の計算を行うエンジン部分も含めて、広義の意味でAIを活用している形です」(大江氏)
では、C-BOSSは実際の業務の中でどのように機能するのか。特に現場の動きを変えるのが月次での運用だ。従来のように各部門の情報をつなぎ合わせるのではなく、C-BOSSを使うことで複数シナリオをPL(損益計算書)ベースで比較検討できるようになる。
例えば、期末までの営業利益見通しが目標に対し1億円不足すると判明したとする。そのリカバリー策として、検討会議では「ポテトチップスとじゃがりこを両方拡販する案」「かっぱえびせんを追加拡販する案」、そして「ポテトチップスを減産して利益率の高い『堅あげポテト』を売る案」の3つが上がった。計算上はいずれも1億円の目標をクリアできるが、C-BOSSの画面は同時にシステム上のリスクも提示する。
「ポテトチップスとじゃがりこを拡販する案は、どちらもばれいしょを大量に消費するため、原材料不足のリスクが表示されます。ならば小麦ベースのかっぱえびせんはどうかというと、今度は工場数の制約から稼働率が上限を超えてしまう。こうした多角的な制約条件を踏まえてシナリオを評価し、最終的に堅あげポテトを拡販する案で全社意思決定を行い、営業、物流、工場へ実行指示を出せる――というイメージです。意思決定と伝達のスピードアップは、すでに実感として得ています」(大江氏)
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