本連載第63回で、ニューヨーク市内の公園を活用した健康/ウェルビーイング推進活動を紹介した。同市では、市公園局が中心となり、夏季の猛暑から市民を守るために展開する、屋外インフラを中心とした市全体の冷却計画である「Cool It! NYC」を策定/運用している(図2参照、関連情報)。
ニューヨーク市は、「HVI(熱脆弱性指数)」という独自の指標を導入し、単に「街全体を冷やす」だけでなく、リスクの高い地域に狙いを絞って木を植え、インフラを整えるという考え方がCool It! NYCの基盤となってきた。加えて、2026年1月1日に新市長に就任したマムダニ氏は、屋外で働くフロントラインワーカーを猛暑から守るため、以下のように、公共空間を活用したCool It! NYC強化策を推進している。
ニューヨーク市におけるフロントラインワーカーの多くは、移民や低所得層、ギグワーカーが占めており、コロナ禍の時代から、リモートワークが不可能な「現場」で地域経済を支えてきた。そのため市当局は、単に「仕事を継続してもらう対象」として見るだけでなく、行政命令(Executive Order)などを通じて「水/日陰/休憩時間の確保」「クーリングステーションの設置」「トイレ利用権の保障」など、過酷な環境下で働くワーカー自身の安全と人権を守る政策を強化している。
LinkNYCは、前回紹介したトロントの「ConnectTO」(関連情報)と同様に、都市の公共空間とデジタルを組み合わせた技術である。当初は、Alphabet(Google親会社)傘下のSidewalk Labs、屋外広告大手のIntersection、Qualcomm、Titanなどの異業種コンソーシアムによる民間事業体(CityBridge)としてスタートし、インフラの設置/運営費用を、デジタル広告収入で賄う形態をとっていたが、その後の経営不振により、デジタルインフラファンドが実質的な主導権を握る通信インフラのアセットオペレーターへと事業を転換している。
トロントでは、同じSidewalk Labsがスマートシティー事業から撤退した後に計画/構築されたConnectTOが、公営/オープンアクセスモデルをベースに、市有資産の有効活用と民間事業者への通信インフラ貸与収益を組み合わせた事業運営を行っている。各ホストシティーを支えるデジタルインフラの事業モデルの動向も、今後注目される。
猛暑対策に関連して、米国肺協会(ALA:American Lung Association)が2026年6月18日、「FIFAの選手とファンが直面する猛暑と健康の脅威」と題するブログ記事を公開した(図3参照、関連情報)。
図3 米国肺協会「FIFAの選手とファンが直面する猛暑と健康の脅威」(2026年6月18日)[クリックで拡大] 出所:American Lung Association (ALA)「The Heat and Health Dangers Facing FIFA Athletes (and Fans)」(2026年6月18日)FIFAワールドカップ2026は、夏季の記録的な猛暑(Extreme Heat)と、気候変動によって深刻化する大気汚染という「二重の健康リスク」の中で行われる。米国肺協会は、サッカーという激しいスポーツの性質上、ピッチに立つアスリートだけでなく、スタジアムや屋外のファンゾーンに詰めかける何百万人もの観客にとっても、呼吸器や心血管系への脅威が懸念される点を指摘している。
プロのサッカーアスリートは、90分以上の試合中に高強度なスプリントを繰り返す。このような極限の状況下で猛暑にさらされると、以下のようなリスクが急増する。
さらに、健康リスクは選手だけにとどまらない。直射日光にさらされるスタジアムの座席や、コンクリートに囲まれた屋外のファンゾーンは、周囲より高温になる「ヒートアイランド現象」が発生しやすい。このようなことから、ファンの間でも、以下のようなリスクが急増する。
米国肺協会は、大会組織委員会や地方自治体、そして個人に対して以下のような多層的な防御策を求めている。
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