慶應義塾大学らは、歯周病の原因菌であるポルフィロモナス・ジンジバリスが産生する酵素の活性を、目視で簡便かつ迅速に測定できる比色検出システムを開発した。
慶應義塾大学は2026年8月31日、歯周病の主要因であるポルフィロモナス・ジンジバリス(P. gingivalis)が産生する酵素ジンジパイン(RgpB)の活性を、特別な分析機器を使わずに目視で簡便かつ迅速に測定できる比色検出システムを構築したと発表した。カリフォルニア大学サンディエゴ校らとの国際共同研究による成果だ。
研究グループは、歯磨き粉の研磨剤などに使用される安価な炭酸カルシウム粒子を担体とする検出用プローブ粒子を開発。担体表面には、ポリ(イソブチレン-alt-無水マレイン酸)(PIMA)を介して、RgpBにより選択的に切断されるペプチド配列と青色色素のメチレンブルー(MB)を固定化した。
同システムでは、RgpBが存在しない陰性サンプルでは粒子が自然沈降して上清が無色透明に保たれる。一方、P. gingivalis由来のRgpBが存在する陽性サンプルではペプチドが選択的に切断され、MBを標識したペプチド断片が上清中に放出して溶液が青色に変化する。この呈色反応により、RgpBの活性を目視で確認できる。
ペプチド配列や粒子表面の修飾密度を最適化したことで、酵素活性を維持したまま切断断片の粒子表面への再吸着を抑えることに成功した。これにより、0.25nMという低い検出限界と高い選択性を達成した。さらに、歯周病患者から採取した歯肉溝滲出液を用いた実証では、P. gingivalisの遺伝子量を測定するqPCR法の結果と高い正の相関を示し、ピアソンの相関係数はr=0.79だった。
同技術は、大型機器を必要としない迅速な臨床現場即時検査(POCT)や、スマートフォンカメラなどを利用したオンサイトでの評価、オーラルケア製品への応用が期待される。また酵素によるペプチド切断と色素放出を組み合わせた原理は、他の疾患関連酵素を標的とした診断システムへも適用可能だ。
従来のPCR法によるP. gingivalisの検出は、専門的な操作や時間、コストを要し、日常的な臨床モニタリングへの活用に課題があった。また既存の比色や蛍光センサーでは、唾液などの生体試料成分が結果に及ぼすマトリックス効果が問題となっていた。
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