連載第52回で、欧州の保健医療機関による気候変動/環境への取り組みを取り上げた。今回は、スマートシティーと健康/環境の観点から、米国ニューヨークの取り組み事例を紹介する。
本連載第52回で、欧州の保健医療機関による気候変動/環境への取り組みを取り上げた。今回は、スマートシティーと健康/環境の観点から、米国ニューヨークの取り組み事例を紹介する。
最初に、「スマートシティー」の定義について整理しておく。例えば、欧州委員会は、「スマートシティー」について、「住民や企業の便益のために、デジタル通信技術を利用して伝統的なネットワークやサービスをより効率的なものにする場所」と定義している(関連情報)。米国では、前バラク・オバマ政権下の連邦政府大統領府が2015年9月14日、スマートシティー・イニシアチブを発表した際に、「住民の生活を向上させるために、データの収集・集約・利用を継続的に向上させるインフラストラクチャを構築しているコミュニティー」と言及している(関連情報)。
他方、テクノロジーの視点に立ったスマートシティーの定義に関連して、IDCは、「都市をより住みやすくするために、新興技術やイノベーションを利用することに焦点を当て、新しいサービスや経済機会を提供する」としており(関連情報)、ガートナーは、「インテリジェントな都市エコシステムの構築に焦点を当て、総合的な目標を達成するために設計されるべきである」としている(関連情報)。
これらの記述を整理すると、さまざまなステークホルダー(例:地域住民、企業、行政機関など)と、さまざまなプラットフォーム技術(例:クラウドコンピューティング、ビッグデータ、モバイル/IoT(モノのインターネット)、AI(人工知能)など)を組み合わせたエコシステムが展開される場所を提供するのが、スマートシティーの役割だといえよう。
ニューヨーク市は、前述のホワイトハウスのスマートシティー・イニシアチブで取り上げられるなど、米国のスマートシティーを代表する都市である。2015年4月22日、ニューヨーク市長のビル・デブラシオ氏は、強力で、持続可能性があり、強靭で、公平な都市の実現を目的とする戦略として「OneNYC」(関連情報)を公表した。その後2019年4月22日には、改訂版となる「OneNYC 2050」(関連情報)を公表している。
「OneNYC 2050」より、図1は、ニューヨーク市の地域別人口推移を示したものである。
ニューヨーク市の人口は、2017年に約860万人規模であったのが、2050年には900万人超になると予測されており、特に、ブルックリン地区やブロンクス地区で、高い人口増加率が見込まれている。金融、メディア、エンターテインメントなど、伝統的なニューヨーク経済を支えてきたマンハッタン地区と、多様性、成長性を特徴とする新興地区の強みをスマートシティーの街づくりや価値にどう反映させるかが注目されている。
このような地域的背景を踏まえ、「OneNYC 2050」では、今後、ニューヨーク市が直面する社会課題として、以下のような点を挙げている。
そして、これらの課題を解決し、新たな価値を生み出すために、表1に示す通り、8つの目標と30のイニシアチブを掲げている。
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