2019年9月23日の国連気候行動サミット2019で脚光を浴びた気候変動/環境問題は、欧州の保健医療分野が直面する社会課題でもある。
2019年9月23日の国連気候行動サミット2019(関連情報)で脚光を浴びた気候変動/環境問題は、欧州の保健医療分野が直面する社会課題でもある。
昨今、欧州連合(EU)からの離脱問題で揺れる英国だが、気候変動対策では重要な役割を担っている。例えば、英国の国民保健サービス(NHS)は、2009年1月、2008年気候変動法(関連情報)に規定された目標達成に向けて、炭素削減戦略(CRS)(関連情報)を策定している。図1は、NHSイングランドの二酸化炭素排出量ベースライン(2007年時点)と気候変動法の目標を示したものである。
その後、NHSイングランドとイングランド公衆衛生庁傘下の持続可能な開発ユニット(SDU)が公表した「2018年天然資源フットプリント」(関連情報)によると、2007〜2017年の間に、二酸化炭素排出量は18.5%削減されたとしている。
他方、国際医療環境NGOの「害のない医療(HCWH:Health Care without Harm)」が2019年9月に公表した「医療の気候フットプリント」(関連情報)によると、NHSイングランド全体の年間二酸化炭素排出量は1800万トン以上と推定され、公的セクター全体の排出量の25%を占めている。NHSイングランドの二酸化炭素排出量は、医療産業の世界平均よりも高く、英国全体の5.4%を占めており、いっそうの排出量削減に向けた努力が求められる。
NHSは、2019年1月7日に公表した「NHS長期計画」(関連情報)の中で、保健と環境について、以下の2点を掲げている。
また、保健医療専門家レベルでは、2016年3月、英国医師会および各医療専門職団体、英国医師会雑誌(BMJ)、ランセットなど、17の組織が共同で、行動を調整し、リーダーシップを提供して、英国全体の医師、看護師およびその他の医療専門家の声の拡大を支援することを目的として、英国気候変動ヘルスアライアンス(UK Health Alliance on Climate Change)を設立している(関連情報)。
さらに、2019年10月24日、英国政府のビジネス・エネルギー・産業戦略省、デジタル・文化・メディア・スポーツ省は、総額3億7000万英ポンドを投資して、バイオサイエンスとAI(人工知能)に長けた高度研究人材の育成を支援するプログラムを発表した(関連情報)。新たな研究人材の活躍が期待される領域は、以下の通りである。
産業界からは、NHSの他、アストラゼネカ、グーグル(Google)、ロールスロイスなどが支援を表明しており、Brexitを挟んで今後の動向が注目される。医療機器やデジタルヘルス関連ソリューションを提供する企業にとっても、研究開発戦略上、バイオサイエンスやAIの気候変動/環境領域への適用拡大は関心事となっている。
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