連載
» 2019年11月15日 14時00分 公開

欧州の保健医療機関はなぜ気候変動や環境問題に取り組むのか海外医療技術トレンド(52)(3/4 ページ)

[笹原英司,MONOist]

バイオエコノミーの社会実装をけん引するデータドリブン・アプローチ

 EUのバイオエコノミー戦略の社会実装に欠かせないのが、情報通信技術(ICT)を共通基盤とするデータドリブン・アプローチだ。前回紹介したデンマークが得意とする手法だが、欧州各国・地域のオープンデータ/オープンガバメントへの取り組みを通じて、欧州全体のデジタル戦略を支える共通フレームワークとなっている。

 例えば、EUの研究開発プログラム「ホライズン2020」の一環として、2017年1月〜2019年12月31日の間、ベルギーのイントラソフト・インターナショナルがコーディネーター役となって進めているプロジェクトに、「データドリブン・バイオエコノミー(DataBio)」(関連情報)がある。

 DataBioは、バイオエコノミー産業が、責任と持続可能性を考慮しながら、食品やエネルギー、生体材料を生産するために、可能な範囲で最高の原材料を農業、林業、水産業から生産することに焦点を当てている。この目標を達成するために、DataBioは、近接/遠隔センサー利用の周辺に集中する革新的なICTと情報フローをコントロールして利用しながら、バイオエコノミーのビジネス業務における意思決定を支援するために、データの発見、検索、処理、可視化のために簡素化されたビッグデータ・インフラストラクチャを提供するとしている。そして、インフラストラクチャ上で展開される農林水産業のパイロットプロジェクトには、地理空間/地球観測(EO)セクターとの協業によるドメイン横断的な活動が含まれる。

 図3は、DataBioの主要ビッグデータ技術コンポーネントを示しており、ビッグデータのインプット(センサー・IoT、データベース、オープンデータ、地球観測)、プラットフォーム(インダストリアルインターネット、X-Road、クラウド)、手法と技術(機械学習、データマイニング、シミュレーション/最適化、複合イベント処理)、サービス(意思決定支援、プロセスコントロール、ビジュアル分析)から構成される。

図3 図3 DataBioの主要ビッグデータ技術コンポーネント 出典:Data-driven Bioeconomy(DataBio)「About DataBIO: Technology
図4 図4 DataBioの分析手法/技術の全体イメージ(クリックで拡大) 出典:Data-driven Bioeconomy(DataBio)「About DataBIO: Technology

 図4は、DataBioの分析手法/技術の全体イメージを示している。一般的に、ビッグデータセットは異質性があり、非構造化される可能性があって、処理が難しい。このプロジェクトでは、ICT、ビッグデータ、地球観測の各専門家の協働により、ビッグデータの多様性(Variety)やビッグデータの変動性(Variability)のサポートを可能にする技術を提供している。DataBioでは、ビッグデータの変動性(Velocity)やビッグデータの容量(Volume)についてもカバーする予定である。

 DataBioは、2018年8月7日、同プロジェクトで開始した実証試験プロジェクトの一覧を公表した(関連情報、PDF)。各プロジェクトは以下の通りである。

【農業関連実証試験プロジェクト】(計13件)

  • オリーブ、フルーツ、ぶどうのプレシジョン・アグリカルチャ(ギリシャ)
  • 野菜の種子作物のプレシジョン・アグリカルチャ(イタリア)
  • 野菜の種子作物のプレシジョン・アグリカルチャ(オランダ)
  • 温室エコシステムのビッグデータ管理(イタリア)
  • 穀物、バイオマス、繊維作物(スペイン)
  • 穀物、バイオマス、繊維作物(ギリシャ)
  • 穀物、バイオマス、繊維作物(イタリア)
  • 穀物、バイオマス、繊維作物(チェコ共和国)
  • 機械管理(チェコ共和国)
  • 保険(ギリシャ)
  • 農場天候保険評価(イタリア)
  • 共通農業政策(CAP)支援(イタリア、ルーマニア)
  • 共通農業政策(CAP)支援(ギリシャ)

【林業関連パイロットプロジェクト】(計7件)

  • 簡単なデータ共有とネットワーキング(フィンランド)
  • 森林所有者向けモニタリング/コントロールツール(フィンランド)
  • 森林被害遠隔センシング(フィンランド)
  • 森林の健康状態モニタリング(スペイン)
  • 侵略的外来種のコントロールとモニタリング(スペイン)
  • 政府の意思決定のためのWebマッピングサービス(チェコ共和国)
  • マルチユーザー森林データ環境の共有化(フィンランド)

【水産業関連パイロットプロジェクト】(計6件)

  • 海洋マグロ漁業の緊急操業選択肢
  • 小規模遠洋漁業の緊急操業選択肢
  • 海洋マグロ漁業計画
  • 小規模遠洋漁業計画
  • 遠洋魚の資源評価
  • 小規模遠洋市場予測とトレーサビリティー

 DataBioでは、これらのプロジェクトのために、17カ国の48のパートナーと、100以上の関連組織から構成されるコンソーシアムを立ち上げ、DataBioの共通プラットフォームを介して、90以上のビッグデータ・地球観測・ICT技術を導入している。今後、個々の実証実験プロジェクトの成果物が公表される予定である。

 DataBioがカバーする技術領域は、伝統的な医療から健康増進・予防への事業展開を図る医療機器/デジタルヘルス企業と重なり合う部分も多いので、注視しておく必要があろう。

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