保健医療と気候変動/環境の複合領域では、新たなイノベーションが期待される反面、従来の技術領域や業種・業界の枠を超えた法規制の新設・改変が、急ピッチで進んでいる。産業界にとっては、環境コンプライアンス管理業務の効率化・自動化も大きな課題となる。
2018年1月18日、欧州委員会は、EUの環境法制順守を強化し、環境ガバナンスを向上させることを目的として、「環境コンプライアンス保証行動計画」(関連情報)を公表した。図5は、行動計画の目標を示している。
ここでは、以下の9項目が目標として掲げられている。
そして、コンプライアンス保証の介入手段として、以下の3つを掲げている。
本連載第50回で触れたように、EUでは、「医療機器規則(MDR)」(2020年5月26日適用開始予定)(関連情報)や「体外診断用医療機器規則(IVDR)」(2022年5月26日適用開始予定)(関連情報)など、域内統一ルール整備に向けた対応が進んでいるが、そこに、環境法規制とのハーモナイゼーションが絡むケースも見受けられる。
身近なところでは、2019年7月23日、欧州委員会が「単回使用医療機器 - 再処理のための安全性と稼働性能に関する要求事項」草案(関連情報)を公開している。これは、MDR施行に対応するためのガイドライン草案であると同時に、再利用による環境負荷低減という側面を持っている。
すでに環境マネジメントシステムの国際標準規格ISO 14001:2015を取得している医療機器/デジタルヘルス関連企業は、リスクベース・アプローチの観点から、保健医療関連規制対応と気候変動/環境関連規制対応の連携・業務効率化の起点として欧州市場を捉えるとよい。前者を担う製品/サービス事業部門と後者を担うコーポレート部門との間の情報共有が必要となる。
笹原英司(ささはら えいじ)(NPO法人ヘルスケアクラウド研究会・理事)
宮崎県出身。千葉大学大学院医学薬学府博士課程修了(医薬学博士)。デジタルマーケティング全般(B2B/B2C)および健康医療/介護福祉/ライフサイエンス業界のガバナンス/リスク/コンプライアンス関連調査研究/コンサルティング実績を有し、クラウドセキュリティアライアンス、在日米国商工会議所等でビッグデータのセキュリティに関する啓発活動を行っている。
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