欧州の医療機器規制改革とサイバーセキュリティ動向海外医療技術トレンド(50)(1/3 ページ)

欧州連合(EU)では、ICT基盤を支える一般データ保護規則(GDPR)やサイバーセキュリティに加えて、医療機器規制全体を取り巻く改革が進んでいる。

» 2019年09月13日 14時00分 公開
[笹原英司MONOist]

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 前回は、オーストラリアの医療機器サイバーセキュリティ動向を取り上げたが、欧州連合(EU)では、ICT基盤を支える一般データ保護規則(GDPR)やサイバーセキュリティに加えて、医療機器規制全体を取り巻く改革が進んでいる。

欧州で進む医療機器−医薬品間のハーモナイゼーション

 本連載第17回で触れたように、欧州連合(EU)は、現行の「医療機器指令(MDD)」や「体外診断用医療機器指令(IVDD)」、「能動埋め込み型医療機器指令(AIMD)」およびそれらに基づくCEマーキング制度などを域内のミニマムスタンダードとして、各国規制当局が個別に所管し、関連法令を制定・運用する方式から、「医療機器規則(MDR)」(2020年5月26日適用開始予定)(関連情報)や「体外診断用医療機器規則(IVDR)」(2022年5月26日適用開始予定)(関連情報)を域内統一ルールとして、各国規制当局が連携して所管する方式への移行期間を迎えている。

 その中で、欧州域内統一ルールの下に医薬品ライフサイクルを監視してきた欧州医薬品庁(EMA)(関連情報)が、各国医療機器規制当局との連携を強めている。EMAは、以下のような製品領域にフォーカスしている。

  • 医療機器を含む医薬品(コンビネーション製品)
  • 補助的医療物質を含む医療機器
  • コンパニオン診断(体外診断)
  • システム的に吸収される物質から構成される医療機器
  • ボーダーライン製品

 このうちコンビネーション製品に関連してEMAは、2019年6月3日、「医薬品-機器コンビネーションのための品質要求事項」草案を公表し、パブリックコメントの募集を開始した(受付期間:2019年8月31日まで)(関連情報)。

 EMAは、コンビネーション製品に関して、以下の2つの分類を示している。

  • 統合型:単一の統合型製品を構成する医薬品および機器
  • 同梱型:同一パッケージに別のアイテムが含まれている医薬品および機器

 EMAは、同梱型または別個に開発した医療機器の場合、従来の医療機器法制に従って、CEマークの認証を取得する必要があるとしている。他方、統合型の医薬品・医療機器の場合、MDRに要求事項が規定されており、コンビネーション製品の承認申請書に、医療機器のCEマーク認証または適合宣言書(DoC)が含まれている必要があるとしている。EMAは、MDRが適用される2020年5月26日までに、コンビネーション製品向けガイドライン最終版を公表する方針である。

 このガイドライン草案に関連して、2019年7月8日、欧州バイオ医薬品企業協会(EBE)と欧州製薬団体連合会(EFPIA)が共同で、「EU医療機器規則第117条に関する産業界の視点:充填済、単独使用、統合型医薬品-機器コンビネーション製品向け臨床要求事項」(関連情報)と題するポジションペーパーを公表している。EBEとEFPIAは、医薬品に対する臨床要求事項の方が、医療機器に対する臨床評価の要求事項よりも上回っている点を指摘し、双方の要求事項を巡ってコンフリクトや不要の重複が起きるリスクについて考慮するよう提言している。

 なお本連載第33回で触れたように、臨床試験の分野では、2014年4月に成立したEU臨床試験規則(関連情報)に基づいて、従来の臨床試験指令に基づく各加盟国の法規制体制から、EMA所管下でEU域内一律適用体制に移行するための作業が進行している。EMAは2019年より臨床試験規則の適用開始を予定しているが、臨床試験ポータル、公開データベース、安全性報告機能などを搭載した臨床試験情報システム(CTIS)の開発作業が当初の予定よりも遅れている。

 欧州市場で事業を展開する医療機器企業は、医療機器規制の域内統一化動向に加えて、コンビネーション製品など、医薬品規制がデータガバナンスなどに及ぼす影響を注視しながら、新製品開発・販売体制を整備する必要がある。

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