一方、スマートシティーを起点とする新産業創出・雇用拡大については、ニューヨーク市経済開発公社(NYCEDC)(関連情報)が積極的に取り組んでいる。例えば、2016年2月16日、NYCEDCは、持続可能性のあるスマートシティーを構築するスタートアップ企業の支援を目的としたプログラムの「アーバンテックNYC」(関連情報)を発表し、New Lab(関連情報)、グランド・セントラル・テック(GCT)(関連情報)と連携して、ブルックリンとマンハッタンに、アーバンテクノロジー・グロース・ハブを創設する計画を明らかにした(関連情報)。
また、2019年1月9日には、NYCDCとNew Labが連携し、ニューヨーク市内における実証実験を通して、資源の再利用・リサイクルや廃棄物の解消、エネルギー効率性の向上に関わるテクノロジー・スタートアップ企業を支援する「2020年版循環都市(Circular City)」プログラムを創設したことを発表している(関連情報)。さらに、同年2月6日には、「アーバンテックNYC」の一環として、NYCDCとCIV:LAB(関連情報)が連携し、70以上の組織による産学連携ネットワークである「The Grid」を創設したことを発表している(関連情報)。
このようなスマートシティー関連プログラムと並行して、NYCEDCは、デジタルヘルスにおいても、活発なイノベーション支援活動を行っている。例えば、「アーバンテックNYC」がスタートした2016年に、ヘルスケア・イノベーション&テクノロジー・ラボ(HITLAB)(関連情報)と連携して、「デジタルヘルス・ブレークスルー・ネットワーク(DHBN)」(関連情報)を創設している。またNYCEDCは、2013年に、ニューヨーク市における医療/ライフサイエンス・エコシステムの構築支援を目的として「デジタルヘルス・マーケットプレース」(関連情報)を創設していたが、2018年より、マッチメーキング、イノベーション支援コンテスト、Webサイトなど、プログラムのリニューアル作業に着手している(関連情報)。
このほか、NYCEDCは、官民連携パートナーシップにより、テクノロジー、メディア関連スタートアップ企業向けのイノベーション支援を目的とする「Digital.NYC」(関連情報)、ライフサイエンス関連研究、イノベーション支援を目的とする「LifeSci.NYC」(関連情報)などの運営も行っている。
2020年3月7日、ニューヨーク州知事のアンドリュー・クオモ氏は、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)に関する緊急事態宣言を発出した(関連情報)。その後同月13日には、ニューヨーク市長が、COVID-19に関する緊急事態宣言を発出し(関連情報)、参加者数500人規模以上のイベントの中止、「エッセンシャルワーカー」以外の職種の在宅勤務シフトなどが盛り込まれた。参考までに、ニューヨーク州において「エッセンシャルワーカー」に該当する業種・職種は以下の通りである(関連情報)。
医療機器の観点から「エッセンシャルワーカー」の分類をみると、製品ライフサイクルの上流段階から、製造、物流、販売、カスタマーサポート、廃棄に至るまでの業務プロセスがほぼ含まれている。これは、スマートシティー戦略に関わる製品・サービスでも同様であり、関連する業務プロセスの担い手の大半が「エッセンシャルワーカー」であることが分かる。当然ながら、健康・ウェルビーイング分野のスマートシティー関連ソリューションは、持続可能性(Sustainability)と強靭性(Resiliency)を兼ね備えていることが必要だ。
もともとニューヨーク市は、2001年9月11日に発生した同時多発テロ事件を教訓に、強靭性を重視した街づくりを行ってきた経緯があり、COVID-19緊急対応期から経済再開に向けた移行期間を迎えた今、その傾向がより鮮明になっている。
ニューヨーク市内で、スマートシティーやデジタルヘルス関連のイノベーション支援活動を行ってきた組織の多くは、リアルの場からバーチャルの場にシフトして、COVID-19緊急対応期間中も、オンラインツールを駆使したコミュニティーエンゲージメント推進策や情報の受発信/共有活動を積極的に行ってきた。また、ニューヨーク市内にサテライトオフィスを有する他国・地域のイノベーション支援組織も、デジタル技術を活用したネットワーキング活動を積極的に展開している。
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