ニューヨーク市のスマートシティー戦略の特徴は、本連載第32回や第47回で取り上げた「持続可能な開発目標(SDGs)」に準拠している点だ。ニューヨーク市は、2018年、世界の都市の中で初めて、SDGs自発的ローカルレビュー(VLR)を公開したところとして知られている(関連情報)。
例えば、図2は、OneNYC 2050の目標の1つである「健康的な生活」とSDGsの関係を示したものである。
ニューヨーク市の場合、健康/ウェルビーイング分野のスマートシティー戦略に基づくイニシアチブとして以下の4つを掲げている。
本連載第52回で、環境品質を健康/ウェルビーイングの中核に据えた欧州連合(EU)のSDGs戦略を取り上げたが、ニューヨーク市の場合、上記の4つのイニシアチブを、以下のようなSDGs目標と関連付けられるように戦略を設計している。
このように、治療から予防医療に至るまで幅広くカバーする包括的なスマートシティー戦略の下で、実践的なイニシアチブを展開できるのが、ニューヨークの強みとなっている。
図3は、「イニシアチブ16.健康およびウェルビーイングの状態を構築するために、物理的環境を設計する」で取り上げられたブルックリン地区ジャマイカ・ベイ公園改善プロジェクトの事例である。州立公園と市立公園を連携させながら、新設の湾沿い自然歩道と既存の自然歩道を組み合わせて、環境的側面(SDGs目標14、15)から、ニューヨーク市民の健康・ウェルビーイングの改善(SDGs目標3)を図ろうとしている。市民の間では、スマートフォンや健康ウェアラブル機器が普及しているので、例えば、運動や移動に関連するデータを利用したサービス開発の場としての公園活用などが想定される。その場合、州、市などの枠を超えた広域的な公園施設管理や消費者保護(例:個人情報保護)に関わる規制の見直しなど、マネジメント面のイノベーションも欠かせない。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.