東京大学は、3層型銅酸化物高温超伝導体の結晶内部に原子層レベルの金属シールドを構築し、乱れから保護した理想的なCuO2超伝導面の作製に成功した。外層が金属シールドとして機能し、電荷供給層から伝わる原子レベルの乱れを遮蔽(しゃへい)する。
東京大学は2026年7月16日、3層型銅酸化物高温超伝導体の結晶内部に原子層レベルの金属シールドを構築し、乱れから保護した理想的なCuO2超伝導面の作製に成功したと発表した。東京理科大学と上智大学との共同研究による成果となる。
銅酸化物高温超伝導体は、電荷供給層からCuO2面へ電荷を供給すると、超伝導を発現する。しかし、電荷供給層に存在する原子レベルの乱れがノイズとしてCuO2面へ伝わると、本来の超伝導状態を乱してしまう。
研究では、単位胞内に3枚のCuO2面を持つ、3層型銅酸化物高温超伝導体に着目。外側のCuO2面だけを高伝導な金属状態へ変化させ、外層を金属シールド、内層を超伝導とした。金属化した外層は、電荷供給層から伝わる乱れを原子層レベルで遮断し、内側のCuO2超伝導面に理想的な電子環境を作り出した。
これは、送電ケーブルなどを保護する金属シールドと同じ設計思想を、結晶内部の原子1層という小さなスケールに応用した初の成果となる。中央の内側CuO2超伝導面は、乱れの影響をほとんど受けない。
また、中央のCuO2超伝導面から観測される超伝導スペクトルは、従来の銅酸化物高温超伝導体と比べてシャープになり、超伝導電子が足並みを揃えて運動するコヒーレンスが向上したことが明らかになった。このことは、外層が金属シールドとして機能し、電荷供給層から伝わる原子レベルの乱れを遮蔽(しゃへい)することで、理想的なCuO2超伝導面を達成したことを実験的に示している。
今回の成果により、原子レベルの乱れによって隠されていた高温超伝導本来の電子状態を直接観測できるようになる。また、原子層レベルの金属シールドという概念は、原子レベルの乱れが物性を左右する強相関電子系や量子材料などへも展開できる可能性がある。より高性能な超伝導材料や新しい量子材料の創製が期待される。
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