量産プロセスで、完璧な量産(組み立て)と検査ができない理由製品リコールを生む品質不良の原因と対策(6)(2/3 ページ)

» 2026年08月05日 07時00分 公開

作業者が組み立て作業に不慣れ

 作業者のスキルが十分でないと、作業標準書に記載された通りに作業できず、品質不良が発生しやすくなる。その要因の1つが、「作業者が組み立て作業に不慣れである」ことだ。

 筆者が経験した中国の製造現場では、地方から出稼ぎに来た女性作業者が多く、製造業や組み立て作業の経験がほとんどない状態で採用される人もいた。中には、ドライバーを垂直に持つところから訓練が必要な作業者も少なくなかった。

ドライバーを垂直に持つことができない作業者のイメージ 図4 ドライバーを垂直に持つことができない作業者のイメージ[クリックで拡大]

 このような作業者には、当然ながら十分な作業訓練が必要である。しかし、中国などの製造現場では作業者が高い頻度で入れ替わることもあり、せっかく作業に慣れても、すぐに退職してしまう場合がある。新しい作業者の採用と教育が繰り返されるため、訓練が追い付かず、作業ミスが発生しやすくなるのだ。

 もちろん、作業訓練の徹底は欠かせない。ただし、教育だけで全てを解決しようとするのではなく、採用時に適性試験を行ったり、作業者のスキルに依存せず正しい作業ができるよう、治具を整備したりするなどの対策も必要である。

作業標準書通りに作業しない

 筆者が経験した中国の製造現場では、作業標準書が正しく作成されていても、そこに記載された通りに作業しない作業者がいた。日本人は決められたルールを順守する傾向が強い一方、中国人は国民性の違いからか、ルールよりも作業者個人の判断を優先する場面が多く見られた。

 例えば、指定された治具を使うと作業に時間がかかるため、治具を使わず、手作業で組み立ててしまうケースである。本来は、組み立て精度を確保するために治具を使用するよう定めている。しかし、その目的を理解していない作業者は、作業の速さを優先し、扱いにくい治具を使わずに作業してしまう。

 別の例として、ビスを16本留める工程で、ビスが最後まで締結されていない、あるいは斜めに締結されているという品質不良が発生したことがあった。

 この工程では、まれに作業が遅れることがあり、そのような場合には、上流工程の作業者が手伝いに来ていた。手伝いの作業者は、取り外しできる電動ドライバー先端の短いビットだけを指でつまみ、ビスを仮留めしていた。

 その後、正規の作業者が電動ドライバーで最後まで締結するのだが、仮留めの段階でビスのねじ部がほぼビス穴に入ってしまう。そのため、正規の作業者が、そのビスを自分で既に締結したと勘違いし、ビスを締めずに作業を終えてしまっていた。

 また、手伝いの作業者がビスを斜めに仮留めし、その後、正規の作業者が斜めになったまま無理に最後までビスを締結することもあった。

 これは、作業標準書から完全に逸脱した2人での作業である。しかし、作業者としては、製造ラインの遅れを解消しようと、良かれと思って行った判断だった。

正規の作業者(左)と、対面にいる手伝いの作業者(右) 図5 正規の作業者(左)と、対面にいる手伝いの作業者(右)[クリックで拡大] ※筆者撮影

 QC工程表や作業標準書は、誰が作業しても同じ結果になるよう、作業方法を統一するために存在する。たとえ個々の作業者が、自分の方法の方が優れていると判断したとしても、現場の判断だけで作業方法を変更してはならない。

 一方で、このような作業が行われた背景には、品質管理文書を守る理由や、その意図について、社員教育で十分に説明できていなかった可能性もある。

 筆者の経験では、中国人には、決められた手順よりも個人の判断を優先しがちな国民性が見られた。そのような製造現場では、単に「この作業をしなさい」「この作業をしてはいけない」と指示するだけでなく、なぜその作業が必要なのかを説明することも大切だ。

 前述した「治具を使わない作業者」の場合であれば、高い精度で組み立てるために治具が必要であることや、治具を使わなかった場合にどのような品質不良が起こり得るのかを事前に説明しておけば、作業者が治具を使った可能性もある。やってはいけないことだけでなく、その理由やリスクまで説明することが重要である。

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