では、そのような異様な構造をどう解決したらよいのでしょう。そこで思い付いたのが「インテグレーター人権宣言(Declaration of the Rights of Integrators)」です。
組織設計/プロセス開発の時点で上記を目指すことで、初めて、「インテグレーション」が、「実態が謎の活動」ではなく、「定義・改善可能なプロセス」となっていくのです。
そして、これを目指さなければ、義務を果たせていない「要件エンジニア」や「アーキテクト」を組織的に生み出し、「インテグレーター」との間に深い溝(断絶)を生じさせるのです。
当然ですが、「要件エンジニア」や「アーキテクト」は、何も「義務を果たそうとしていない」のではないでしょう。むしろ、「構造的無能化」※9)されているだけであることの方がほとんどでしょう。また、「組織設計/プロセス開発を行う人」も、おそらく悪意はないでしょう。単に「インテグレーターは、苦労を背負ってアタリマエ」と刷り込まれている結果、これも「構造的無能化」の一形態です。少なくとも、「個人的動機、つまり行為者にとっての明確な「個人的利得」がない」というのはほぼ間違いないでしょう。
※9)埼玉大学 教授の宇田川元一氏が提唱されたものとのことで、ある先生から教えていただいた言葉ですが、私は「組織プロセスアーキテクチャ設計の失敗」と呼んでいました。
現場の「インテグレーター」が、上流と断絶し孤軍奮闘する中で「上流へのフィードバックは無駄」と「学習」してしまう前に、断絶の兆しに対して対処する必要があるのです。
「インテグレーションって、くっつけるだけでしょ? 何が難しいの? さっさと済ませてよ!」と言われることは、少なくありません。インテグレーター人生の中で耳にすることの多い「耳タコ」的なものの典型の一つですね。
でも、そのような発言は、「発言者当人の、無知の告白」あるいは「押しつけという形での拒絶宣言(相手に対する差別的扱いを行うという宣言)」以外の何物でもありません。
皆さん、従来スタイルのままで行けるという夢物語や自己暗示は、もう諦めてください。
私たちに必要なのは、以下の2つです。
もちろん、上流の見直しについても、すでに「最低限アーキテクチャ設計で見直すべきポイント」などを用意していますが、そこは個別のお問い合わせでの対応とさせていただきます。
今回、構造的な問題をご紹介しました。
「それは理想論だよね、現実はそんなもんじゃないんだよ」というセリフ、はい、もう耳にタコができるくらい聞き飽きています。「耳タコ」的なもののもう一つの典型ですね。
その手の「議論を打ち切るための一方的な宣言」「理想論だから無視してよいという謎の論理展開」をする方とは、正直なところそれ以上コミュニケーションをしても無駄なことが少なくありませんし、不愉快極まりないことですから、私は通常、それ以降はそのような輩には関わらないようにしますし、仮に反論するとしたらこうなります。
でも、今回のトピックに関しては、おそらく上記の反論を食らうことになる方こそ、支援が必要なのかもしれないと思っています。おそらく「構造的無能化」はそういった方にも作用してしまっているのでしょう。その作用の元凶は、「インテグレーション/インテグレーターに面倒なことを押し付けてよい」と思わせてしまうような「位置付け」や「呪いの言葉」なのです。正常化のきっかけ、インテグレーションにまつわる異常な状態からの脱却のきっかけ/原点として必要なものこそが、「インテグレーター人権宣言」なのだと考えます。
なお、そもそも、理想的な姿やあるべき姿が示されなければ、そこからのズレ/逸脱によるリスクを把握することはできません。
「理想論だから無視してよい」という謎の論理展開は、もはや「リスク把握を無力化するための働き掛け」という無効化行為であり、特大のリスク、不正行為として扱ってもあながち間違いではないでしょう。
また、「具体的な対処が示されていないじゃないか」というご批判もあることは予想しています。しかし、組織設計やプロセス設計、リスクコミュニケーション設計は個別事情への依存が非常に大きく、個別事情の把握(現状分析)なしには有効な対処を示すことは不可能です。そのため、(基本的には私のいつものスタイルですが、)まずは問題の構造をご理解いただくことを優先しました。
ということで、今後は、直接フィードバックをいただいた内容に基づき、テーマを決めていきたいと思います。
もちろん、コンサルティングのご依頼も歓迎です(筆者である櫻井氏の連絡先:t-sakurai@esol.co.jp)。
櫻井 剛(さくらい つよし)particle代表(2025年より) 兼 イーソル株式会社 ビジネスマネジメント本部 ソリューションアーキテクト兼Safety/AUTOSAR シニア・エキスパート
自動車分野のECU開発やそのソフトウェアプラットフォーム開発/導入支援に20年以上従事。現在は、システム安全(機能安全、サイバーセキュリティ含む)とAUTOSARを柱とした現場支援活動や研修サービス提供が中心(導入から量産開発、プロセス改善、理論面まで幅広く)。標準化活動にも積極的に参加(JASPAR AUTOSAR標準化WG副主査、AUTOSAR文書執筆責任者の一人)。イーソル所属以前の連載記事は以下の関連記事のリンクをご参照ください。
AUTOSARの“AR”はアーキテクチャに由来、アーキテクチャ設計にどう使うのか
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SDVに向け改めてAUTOSARを「ひとごと」ではなく「自分事」にすべしCopyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
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