インテグレーション地獄からの脱却:構造問題と「インテグレーター人権宣言」AUTOSARを使いこなす(41)(1/4 ページ)

車載ソフトウェアを扱う上で既に必要不可欠なものとなっているAUTOSAR。このAUTOSARを「使いこなす」にはどうすればいいのだろうか。連載第41回は、AUTOSARにとどまらず「インテグレーション地獄」が繰り返される構造問題を分析するとともに、筆者が訴える「インテグレーター人権宣言」を通してインテグレーターの位置付けについて考察する。

» 2026年07月16日 08時30分 公開
[櫻井剛MONOist]

はじめに

 「AUTOSARを使いこなす」というお題で、2018年から8年、40回以上にわたり連載を続けてまいりました。

⇒連載「AUTOSARを使いこなす」バックナンバー

 さて、「使いこなす」といっても、さまざまな側面があります。

  • AUTOSARを運用できるようになる(例:BSW(Basic Software)のような構成要素や、各種ツールを使えるようになる)
  • AUTOSARの運用効率を高める
  • AUTOSARを導入することで、組織の能力/パフォーマンスを高める
  • AUTOSARを利用することができる産業界全体(自動車に限らず)の能力/パフォーマンスを高める

 実際には、「AUTOSARは、運用するだけでも一苦労」とおっしゃる方が少なくありません。

 さて、私自身は、標準化活動以外にも、さまざまなプロジェクトで以下のような活動に関わってきました。

  • 要件定義
  • 実現戦略策定(プロセス開発/計画/システムやソフトウェアのアーキテクチャ設計)および改善
  • ソフトウェア実装(アプリケーション、基本機能ブロック群) ※一時は光学系の樹脂部品設計などにも関わっていました
  • さまざまなレベルのインテグレーションとその検証 ※ソフト/ハードのインテグレーションだけではなく、他社製異種ECU(電子制御ユニット)との統合なども(しかも、AUTOSAR登場以前に!)
  • アセスメント/監査
  • 上記に関する支援

 中でも、「インテグレーション」は苦労してきた領域です。

 今回のお題は「インテグレーション」と「インテグレーター」を取り上げ、なぜ苦労するのか、その根本的な原因を解き明かしていきたいと思います。

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 なお、コンテンツの割にサイズが大きい(約30MB)という点については、是正をすでに求めています(地球の裏側からのダウンロード時間に対しては、なかなか感度が上がらず……。指摘を繰り返します)。

今後の関連イベント

  • 2026年9月9〜11日:「オートモーティブワールド 2026 秋」(会場:幕張メッセ)
    ※AUTOSARや各種団体による多数の講演の予定がございます。また、AUTOSARパートナー各社とともに特別出展エリアにブースを出展します
  • 2026年11月18〜20日:「EdgeTech+ 2026」(会場: パシフィコ横浜)
    ※AUTOSARパートナー各社とともにパビリオン形式でブースを出展します
  • 2026年11月25〜27日:「オートモーティブワールド 2026 名古屋」(愛知国際展示場 Aichi Sky Expo)
    ※AUTOSARと国内完成車メーカーによる合同講演の予定がございます。特に、国内完成車メーカーでの運用体制の事例紹介は皆さまに関心をお寄せいただける内容です!
  • 2026年12月3日夕方:AUTOSAR R26-11リリースイベントがオンラインで開催されます

 なお、私の講演では、SDV(ソフトウェアデファインドビークル)で求められていることを整理したものや、物事の本質がバズワードの寿命とは別物であることなどをご紹介する予定です(図1)。

図1 図1 SDVに求められること〜ほとんどが20世紀から言われ続けていること〜[クリックで拡大]

「インテグレーション」と「インテグレーター」

 「インテグレーションは難しい」とよく言われていますね。

 難しいと言われる対象には、例えば以下のようなものがあるでしょう。

  • インテグレーションの実施:例)広範な知識や高い対応能力が必要になる
  • インテグレーションの計画、進捗把握/進捗管理:例)不測の事態が発生し、試行錯誤が必要になり、泥臭い作業になることが多い(謎の作業)
  • インテグレーションでの記録の残し方:例)どのような成果物を残したらいいのか分からない
  • そもそも、何をやったら「インテグレーションを完了した」と言えるのか、よく分からない/自信がない※1)
  • インテグレーションのプロセス化(構築)や改善
  • インテグレーション能力の高い人財の育成:例)インテグレーション技術を伝承できない、育てようとして育つものではない

 もちろん、「難しい」と言っているだけでは、インテグレーションを行う人財(インテグレーター)を育てることはできないでしょうし、人財像(能力要求)を示そうとしても、せいぜい以下のように表現するのが精いっぱいでしょう。※2)

  • 全体像を俯瞰(ふかん)しつつ、「何とかする力」を発揮できる人

※1)インテグレーションゴール(Integration Goal)とその考え方については、連載第35回の解説もご覧ください

※2)「全体像を俯瞰しつつ、『何とかする力』を発揮できる人」と言うのは簡単です。ですが、そんな人を育て上げようとしても、
・俯瞰と言われても、特に2000年代以降、「分業化」が進み、「横断的に対象を見る」という経験を得る機会は激減しています
・「何とかする」と言われても、「何を、どうすることができる」ということが求められるのかを示していませんから、具体化できません

 ここからは、そんな状況がなぜ生まれてしまうのか、その根本的な原因を解き明かしていきましょう。

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