SDVに向け改めてAUTOSARを「ひとごと」ではなく「自分事」にすべしAUTOSARを使いこなす(38)(1/3 ページ)

車載ソフトウェアを扱う上で既に必要不可欠なものとなっているAUTOSAR。このAUTOSARを「使いこなす」にはどうすればいいのだろうか。連載第38回は、2025年7月の「AUTOSAR & JASPAR Japan Day」について報告するとともに、SDVの開発を国内自動車業界が推進していくためにAUTOSARをどのように活用すべきかについて提言する。

» 2025年09月04日 06時00分 公開
[櫻井剛MONOist]

はじめに

 筆者が住んでいる新潟県では、晴れ日が長く続いていましたが、この原稿を書き始めたお盆休み前、立秋後ですがようやく雨が降りました。

 その頃にはちょうどイネも開花の時期を迎えていました(図1)。正確には、いったん開いた後に閉じ、籾殻の外に雄しべが残されている時点で撮影したものです。

 籾殻が開いて雌しべが見えるのはごくわずかな時間。そして、この休暇期間もみっちり予定が詰まっていてゆっくり時間を取ることもできずにいて、籾殻が開いているタイミングには今回間に合いませんでした。何事もタイミングがあるものですね。でも、開花は毎年のことですので、来年チャレンジしたいと思います。

 暑く、また時にはジメジメした日が続いています。でも、徐々に暑さも和らいでいくでしょうし、秋の収穫の時期に向かっているのは間違いありませんから、そんなポジティブな面を見ながら、しのいでいきたいところですね。

 ただ、SDV(ソフトウェアデファインドビークル)のためのさまざまな取り組みは、イネの開花のように定期的にチャンスが巡ってくるものばかりではありません。

 イベントや講演なども一期一会で、タイミングを逃したら二度とありません。

 ということで、今回は、まずイベントや講演の開催告知とご報告を、そして、AUTOSARの導入/運用に関するおさらいをしたいと思います。

図1 図1 イネも開花の時期に。新潟県魚沼市で2025年08月10日に筆者撮影[クリックで拡大]

AUTOSAR日本事務局による講演のお知らせ

 AUTOSAR日本事務局では、2025年内に2つの講演を予定しています。

 まずは1つ目です。2025年9月17〜19日に幕張メッセで開催される展示会「第4回 オートモーティブ ワールド[秋]」のカンファレンスイベント「SDVフォーラムX」です。2024年9月の前回に続き今年もお招きいただきました。初日の9月17日にAUTOSAR Regional Spokespersonの後藤正博氏による講演を、そして、2日目の9月18日に筆者によるAUTOSAR日本事務局としての講演を予定しています(図2、図3)。

 後藤氏の講演「AUTOSARのオープン戦略」では、SDVに向けて加速するソフトウェア基盤のためにAUTOSARが進むべき方向性について述べます。AUTOSARの標準を、ゾーンアーキテクチャに対してどのように配備するかの例を示し、オープンソース活動に向けた進め方を解説する予定です。

図2 図2 「SDVフォーラムX」におけるAUTOSAR Regional Spokesperson 後藤正博氏の講演概要
図3 図3 「SDVフォーラムX」におけるAUTOSAR日本事務局 櫻井剛氏の講演概要

 2つ目の講演は、2025年9月19日に、AUTOSAR Premium PartnerであるETASさまの日本法人であるイータスさまよりご招待いただきまして、同社のカンファレンスイベント「ETASシンポジウム2025」で講演を行います。

 筆者は、「SDVにおけるAUTOSAR - 概要(AUTOSAR in the context of SDV - Overview)」と題し、AUTOSAR日本事務局として講演します。SDVの基盤の一つであるAUTOSARについて、その概要と最近の動向をご紹介するとともに、SDVの時代のプラットフォームに求められること(もはや決して、AUTOSARは「ソフトウェア部品集」にとどまるものではありません! 20年前の端折られすぎた説明に惑われてはなりません!)や、その運用において求められること、そして、標準化などの協働コミュニティーとの関わり方について、ご紹介したいと思います。

 皆さま、会場でお目にかかれることを楽しみにしております!

AUTOSARからのお知らせ

 第17回AUTOSAR Open Conference(AOC)が、2026年7月28日〜30日に米国デトロイトで開催されることとなりました。

 今回のテーマは「Smart Software Integration with AUTOSAR(AUTOSARとの、スマートなソフトウェアインテグレーション)」です。既に講演の募集(call for paper)も開始されました(講演申込期限:2025年11月15日)。

 詳細は以下のAUTOSARのWebサイトをご覧ください。

⇒第17回AUTOSAR Open ConferenceのWebサイト

 また、前回のAOCで発表された、AUTOSAR Common Adaptive Platform Implementation(CAPI)についても、2025年第2四半期のAUTOSAR Newsletter内で一般発表されました。

 なお、AUTOSARのNewsletterは、従来はAUTOSARパートナー企業/団体の窓口/WGメンバーなどに直接配信されるのみでしたが、今回から一般公開に切り替わっております。

 ぜひ定期的に以下のWebサイトをご覧いただければと思います。

⇒AUTOSAR NewsletterのWebサイト

 併せて、AUTOSARでのコンセプト開発活動(新規機能追加提案/標準化活動)のロードマップについても、同様に一般公開となっています。

⇒AUTOSARコンセプト開発活動ロードマップのWebサイト

 また、AUTOSAR標準化活動への参加資格があるパートナー(プレミアムパートナーなど)限定のイベントとなりますが、AUTOSAR All WG Meetingの次回開催地と日程が決まりました。2026年3月23〜27日にドイツのダルムシュタット(フランクフルトから南に約30km)で開催されます。

 こちらを含めてAUTOSAR関連イベントの情報については以下のWebサイトをご覧ください。

⇒AUTOSAR関連イベントのWebサイト

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