最後に登壇した日興食品 シニアアドバイザーの文室博之氏は、「甘夏原料自動計量化による省力化と生産量拡大」を報告した。
日興食品は甘夏缶詰で国内トップシェアを持っており、甘夏缶詰の需要が拡大する一方、原料処理工程では人手不足が大きな課題となっていた。甘夏は果皮が厚く、機械で皮をむくことが難しい。また、前処理工程では重量のあるコンテナを扱う作業が発生し、作業者の身体的負担も大きかった。
同社はこうした課題に対し、コンテナ反転装置と自動計量搬送システムを導入した。原料を人手で持ち上げたり移し替えたりする負担を軽減し、計量や搬送の効率化を図った。導入に当たっては、狭い工場スペースという制約もあった。既存設備との兼ね合いを踏まえながら、設備メーカーと協力してレイアウトを検討し、省力化と生産量拡大の両立を目指した。
文室氏は、「設備導入の成果として、労働生産性の向上、工数削減、多能工化の推進につながった」と説明。自動化によって重労働を減らすことで、作業者の負担軽減だけでなく、他工程への応援や教育にも時間を振り向けやすくなったという。
文室氏は「省力化の目的は単に人を減らすことではない。自動化によって生まれた余力を人材育成や職場環境の改善につなげることで、現場全体の力を高めることができる。目標とする笑顔あふれる職場環境に一歩近づけた」とアピールした。
セミナー後半では、登壇した食品メーカー3社と農林水産省によるパネルディスカッションも行われた。3社ともに共通していたのは「機械を導入することがゴールではなく、まず現場の課題を正しく捉えることが重要」という点だった。また、東洋ナッツ食品の倉内氏は「AIやIoT(モノのインターネット)の導入コストが下がっており、中小企業こそチャンスではないか」と訴えていた。
自動化を進める上では、設備投資の判断、社内合意、仕様検討、現場教育など、多くの壁がある。しかし、今回の3社の事例は、その壁を越えた先に、単なる省人化にとどまらない効果があることを示していた。
食品製造業における省力化投資は、今後さらに重要性を増していく。人手不足が続く中で、生産量や品質を維持し、事業を継続していくためには、従来の人手に依存した工程を見直す必要がある。
ただし、自動化は機械を入れれば完了するものではない。むしろ重要なのは、導入前に現場の課題を可視化し、導入後に人の役割をどう変えるかを設計することだ。
今回のセミナーで示された「人を育てる自動化」とは、人を機械に置き換えることではない。機械が得意な作業は機械に任せ、人は品質を高め、工程を改善し、新たな価値を生み出す仕事に向かう。そのための基盤づくりこそ、省力化投資の本質だといえる。
食品工場の自動化は、人材育成と競争力強化を両立する取り組みへと進化しつつある。
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