こうした支援を受けて、実際の現場ではどのような変化が起きているのか。「希少な海産資源のロス削減と省人化の両立は可能か?」というテーマで、最初に事例を紹介したのは、東洋ナッツ食品の生産技術グループ課長 倉内敏章氏だ。
東洋ナッツ食品によれば、同社は日本で初めてミックスナッツを製造販売したメーカーで、ロングセラー商品「さかなっつハイ!」は、ナッツと国産カタクチイワシを組み合わせた人気商品となっている。しかし、カタクチイワシの漁獲量は20年連続で減少傾向にあり、原料確保が大きな課題となっていた。一方で、製造現場では、包装工程で魚がシール部に挟まる「かみ込み」が頻発。1日2万5000パックの製造で325パックが不良となり、かみ込み率は1.3%に達していた。また、かみ込みを防止するために包装速度を制限すると、生産効率が悪くなる課題もあった。
そこで同社は、農林水産省の補助事業を活用し、川島製作所製の縦ピロー包装機を導入。ポイントは、単に設備を更新するのではなく、包装工程そのものを見直したことにある。
新たな包装機はフィルム搬送方式を採用しており、フィルムに余裕を持たせる「しごき機構」や、内容物の落下時に衝撃を和らげる「エッグキャッチ機構」によって内容物が袋の下部に収まりやすくなり、シール部へのかみ込みを抑制。その結果、かみ込みは1日325パックから2パックへ激減した。
倉内氏は「廃棄されるカタクチイワシの量を年間1t(トン)以上削減できたほか、包装速度の向上と検査工程の自動化によって、2ラインで6人だった配置を4人に削減できた」と原料ロスと省人化を両立できたことを明かした。
さらに倉内氏は、「この成果は『省人化』という言葉だけでは語れない」とも強調。削減できた人員は品質管理や工程改善など、より付加価値の高い業務へ配置転換することができたからだ。「自動化は人の仕事を奪うためではない。人が“考える仕事”に集中するための手段だ」と訴えた。
続いて、「1食用ミニとろろ昆布包装、検品工程自動化による省人化」というテーマで登壇したのは、昆布製品を製造するマツモト 函館工場 商品管理部 取締役部長の山本知史氏。同社もまた自動化の前に、工程そのものを見直した企業だ。
同社が製造する1食用ミニとろろ昆布は、学校給食や乾麺の具材などにも使われている商品だ。従来の工程では、成形されたとろろ昆布を作業員が手作業で整列させ、ピロー包装機に投入していた。その後、かみ込みの確認、100個単位での計数、袋詰め、シール、箱詰めなど、多くの作業を人手に頼っていた。
山本氏は「工程には延べ4人が関わり、1日17時間もの作業が必要だった。しかも作業内容の多くは数を数える、並べる、確認するといった単純作業。そのため人件費の割合が高く、粗利が低い商品になっていた」と振り返る。
転機となったのは、外部専門家からの指摘だった。ロボット導入支援の専門家が工場を視察した際、作業者が手作業で製品を整列させる工程を見て「何をしているのか?」と疑問に思われたという。さらに、トヨタ自動車北海道の改善担当者からも、同じ工程について全く同じ指摘を受けた。
山本氏は「自分も入社当初は疑問に感じていたが、途中から景色の一部になってしまった」と語った。長年続いてきた作業は、現場の中では当たり前になりやすい。しかし、外部の視点を入れることで、改善すべき工程が明確になった。
当初、同社は古くなったピロー包装機の更新を検討していたが、システムインテグレーターとともに工程を見直した結果、包装機の入れ替えだけでは不十分だと判断。そこで、X線によるかみ込み検査装置、自動計数機、大袋への投入装置などを組み合わせ、ライン全体を再設計した。
新ラインでは、包装速度が約2倍になり、検査や計数も自動化された。延べ4人が必要だった工程は1人で運用できるようになり、生産量はほぼ倍増。包装材や段ボールサイズの見直しも併せて行ったことで、利益率は約20%向上したという。
山本氏は「自動化は機械を入れることが目的ではない。人が単純作業から解放され、改善活動や新しい仕事に取り組めるようになった。継続的に改善点を自ら見つけて解決できる人材を育てるきっかけにもなった」と成果を語った。
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