DMG森精機は、機械加工を中心とする製造現場のデータ利活用を推進するデータエコシステムの構築に乗り出す。産総研とともに100社、1000台の設備から収集した大規模な稼働データを基に、高精度な加工を支える製造フィジカルAI(人工知能)の基盤モデルを開発する。
DMG森精機は、機械加工を中心とする製造現場のデータ利活用を推進するデータエコシステムの構築に乗り出す。
同社は2026年7月3日、経済産業省とNEDO(新エネルギー・産業技術総合開発機構)が実施する「ポスト5G情報通信システム基盤強化研究開発事業/データエコシステムの構築等に関する研究開発(GENIAC事業)」において、グループ会社のWALC、DMG MORI Digital、産業技術総合研究所(以下、産総研)との共同提案が採択されたことを発表した。協力企業を募り、それらの企業から収集した大規模な稼働データを基に、高精度な加工を支える製造フィジカルAI(人工知能)の基盤モデルを開発する。
今回の事業では、DMG森精機のクラウドプラットフォーム「CELOS Xchange」を基盤に、協力企業約100社、約1000台の生産設備から最大1kHzという高頻度でデータを収集し、約100TB規模の実運用データを整備する。AIモデルの開発には大量の現場データが欠かせないが、DMG森精機単独では収集が困難だ。産総研や経産省、NEDOとともに、企業横断的に広く協力を呼び掛け、現場データを集める。
CELOS Xchangeは、DMG森精機の最新の制御装置「CELOS X」で収集したデータを集約、蓄積するクラウド基盤として機能している。DMG森精機製だけでなく、他社製の工作機械もつなげられるように設計されている。
DMG森精機の伊賀事業所(三重県伊賀市)で行われた記者説明会において、WALC 社長の櫻井努氏は「一般的に、1秒に1回程度のデータモニタリングでは、温度や音の大きさなどしか把握できない。機械加工でツールとワークが当たる瞬間といった微細な物理現象をAIに理解させるには、より細かい時間軸でデータを見る必要がある。ただ、あまりに高い周波数でデータを取得しても、逆に社会実装が難しくなってしまう。社会実装が可能で高い解像度も得られ、フィジカルAIのデータ基盤を構築するのに十分なレベルというのを産総研とも議論して1kHzに決めた」と話す。
集めるデータの種類としては電流や温度、水位、油圧、空圧など設備の状態に関するデータ、ワークや工具の位置や回転数、加工条件など加工工程に関するデータ、OK/NGや寸法、形状などの品質に関するデータ、搬送装置など周辺設備に関するデータなどを想定している。これらのデータに匿名化、構造化、権利処理を施した上で、提供要件に基づき第三者にも開放してAI開発などを推進する。データ取得期間は2年間となっている。
DMG森精機は産総研とともに、AIの要素技術開発を3つの段階で描いている。第1段階では、AIによって異常を検知する機能を開発。さらに、機械のどこに異常が発生しているかを自然言語(チャット)で確認できるインタフェースを構築する。第2段階では、加工品質や消費電力を最適化するAIの予測モデルを構築する。第3段階では、工作機械単体だけでなく、AMR(自律型搬送ロボット)や計測機も含めた生産セル全体で品質を判断する、高度なフィジカルAIの検証などを行う。
設備異常検知にとどまらない多目的AI開発基盤を構築し、品質予測や加工条件最適化などへの応用を進めるとともに、市場投入後の設備から継続的にデータを収集、学習、還元する仕組みを確立し、生産設備データエコシステムの実現を図る。
ヒューマノイドをはじめとするロボットにおけるフィジカルAIは、カメラやセンサーで周囲を認識してロボットが自律的に動く。DMG森精機 執行役員でテクニウム 社長のBlumenstengel健太郎氏は「工作機械はロボットより、スピードが速く精度も高いため、ロボットのようにVLM(視覚言語モデル)を適用して視界情報を基に加工を制御するのは難しい。AIやデジタルツイン、さまざまなデータを物理モデルに基づいて処理することによって、見えているものではなく、物理と言語を組み合わせたモデルが工作機械におけるフィジカルAIの答えになっていくのではないか。センサーデータと時間、空間を理解させることができれば、VLMと同じことが原理的には可能になると考えている」と語る。
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