また、研究データを扱う上で欠かせない「安心感」についても工夫がある。熊谷氏は「現行のオープンβ版では、ユーザー自身の『Googleドライブ』と直接連携してデータを保存する仕組みを採用している。そのため、さくらインターネット側はユーザーの実験データを一切保持および閲覧できず、情報漏えいのリスクを抑えている。Googleドライブの利用が許可されている企業や研究機関であれば、すぐにでも安全に導入が可能だ。将来的には、より厳密な管理が求められる企業向けに、さくらインターネットのオブジェクトストレージなどを活用し、国内完結のソブリンクラウド的な環境でデータを保護する有償プランの提供も検討している」と言及した。
今後は、学生と指導教員などがノートを共有できる「ワークスペース機能」をはじめ、アクセス権限管理や研究不正/改ざん防止機能を強化した組織向けの有償クラウド版のリリースも目指している。
有償版を計画する一方で、熊谷氏は「オープンβ版のような無料プランは今後も残し続けたい」と強調した。
「電子実験ノートは高価で導入できないという声をなくしたい。特に大学生のうちから『eureco』に無料で触れて、効率的な情報集約のクセを付けてもらえば、企業に就職した後に『取りあえずExcelに記録する』『紙のノートから抜け出せない』といったレガシーな習慣を変えていけるはずだ」(熊谷氏)。
なお、現在提供されているオープンβ版は、専用アカウントの作成が不要で、所有しているGoogleアカウントと連携するだけで無料で利用できる。「まずは趣味の研究や、漏えいリスクのないデータで構わないので、気軽に操作感を体験してほしい」と紹介した。
将来は、データとモノのプロビナンス(来歴)を記述するための国際標準のデータ「PROV Data Model(DM)」や、ドイツの社会学者であるニクラス・ルーマン氏が考案した知識整理/発想支援メソッド「Zettelkasten(ゼッテルカステン)」を踏まえた機能を実装することも視野に入れている。
PROV DMの機能について、熊谷氏は「eurecoのノート上の見出しや文章に『手順』などのラベルを付与するだけで、裏側で自動的に実験プロセスがPROV DM形式で構造化でき、機械で識別可能なデータとして保存される仕組みを目指している」と触れた。
Zettelkastenは、リンクを介してさまざまなノートを結び付ける知識管理手法だ。熊谷氏は「Zettelkastenを踏まえた機能は、『AはBである』『BはCである』などが記載されたノート群をAIに読み込ませることで、『AはCではないか』という新しい洞察や仮説を自動生成させることを構想している。何気ない日々の記録から、AIの力を使って新しい発見を生み出す。それが狙いだ」と明かした。
eurecoという名称について、「eurecoという名前は、『エウレカ(見つけた)』と思わず叫びたくなるような発見につながる実験ノートにしたい、という思いを込めている」(熊谷氏)。
実験で扱う情報を一元的に整理/管理できるノートアプリ、基本機能を無料提供
進化を続ける国産電子実験ノート、年1バージョンアップで機能を追加/改善
AGCが内製ツールで挑むマテリアルズインフォマティクス、新組成を8倍速で発見
材料開発向けデータマネジメントプラットフォームの国内販売を開始
MIを活用し高性能かつ量産可能な新規無鉛圧電材料を半年で開発Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
素材/化学の記事ランキング
コーナーリンク