続・なぜ設計プロセスで「完璧な設計」ができないのか製品リコールを生む品質不良の原因と対策(4)(2/3 ページ)

» 2026年05月27日 06時00分 公開

製品メーカーの品質レベルが低い理由:品質レベルを低く設定している

 製品メーカーの品質レベルが低いもう1つの理由は、設計者の設計スキルが高くても、意図的に製品の品質レベルを低く設定している場合があるからだ。

 一般的に、品質レベルが高い設計はコストがアップする。次にその例を挙げる。

■材料コストがアップ:
 安全性を高めるため、より燃えにくい樹脂材料を選定すると、部品コストが高くなる。

■部品コスト/設計コストがアップ:
 信頼性を高めるため、荷重に耐える板金フレームを追加すると、部品点数が増え、設計工数も増加する。

■試験コストがアップ:
 安全性と信頼性を高めるため、2次バッテリーを内蔵したハンディー製品の落下パターンを増やして試験すると、試験工数が増える。

 品質レベルは、高ければよいというものではない。例えば、人が手に持って使うスマートフォンに、10mの高さから落下させても壊れない品質レベルは必要ない。

 もちろん、コストが変わらず10m落下に耐える設計ができればよいが、通常はコストアップにつながり、過剰品質になってしまう。その理由は、落下衝撃に耐え得る高価な材料を使う必要があったり、筐体を頑丈にするために肉厚を増して材料費が上がったりするからだ。

 過剰品質を避け、落下高さを必要最低限の2mに設定すれば、一般的には10m落下に耐える設計よりもコストを抑えやすい。結果として、ユーザーが満足する購入価格につながり、製品メーカーにとっても利益を確保しやすくなる。ユーザーに必要な最低限の品質で製品を設計することは、とても重要な設計スキルだ。

 しかし一方で、「10mから落下させても壊れない!」を売り文句にすることで、販売価格が多少高くても、頑丈な製品を好むユーザーに選ばれるかもしれない。このように、どの品質レベルを狙うかは、基本的に製品メーカーのビジネス判断に委ねられる。

 ここで問題になるのが、利益優先や競合他社との価格競争によって、品質レベルを低く設定し過ぎてしまうことだ。

 ところが、品質レベルを下げてコストを極力抑えた製品を作ろうとしても、実際にはそう簡単ではない。その理由は、次の4つのフィルターがあるからだ。

  • 安全規格
  • リコール
  • PL法(製造物責任法)
  • 市場の評判

 最低限守るべき安全性に関わる品質には、世界中で安全規格という法令が定められている。日本の電気製品では、PSE(電気用品安全法)が有名である。

 PSE以外にも安全規格は製品カテゴリーごとに多数存在するため、どの安全規格が該当するのかを調べる必要がある(参考記事[2])。

 また、PL法(製造物責任法)によって、たとえ製品メーカーが品質レベルは妥当だと判断していても、ユーザーが製品の欠陥によってけがをし、安全性に問題があると判断すれば、損害賠償を求められる可能性がある(参考記事[3])。

 上記3つの「安全規格」「リコール」「PL法」は、安全性に関わる品質のフィルターとなる法令といえる。一方、壊れやすさを示す信頼性に関する品質の法令はない。

 しかし、信頼性が低くても問題ないわけではない。特に最近では、製品が簡単に壊れるとSNSなどで一気に拡散される可能性がある。

 市場で「壊れやすい製品」「壊れやすいメーカー」という評判が一度広まってしまうと、そのレッテルを簡単に払拭(ふっしょく)することはできない。昔の日本製品や、少し前の中国製品は「安かろう悪かろう」と言われていた。また、日本の家電メーカーや自動車メーカーの中にも、かつて同じような評価を受けていた企業はある。そして、そうしたイメージを挽回するには、最低でも10年以上かかる場合が多い。

安全性と信頼性の品質レベルの下限 図3 安全性と信頼性の品質レベルの下限[クリックで拡大]

品質基準/システムが未成熟の対応:他社の製品を参考にする

 品質レベルを確認するための試験項目は、前回でお伝えしたように、以下の方法で洗い出す。

  • JIS検索
  • Web検索
  • 専門家に相談

 品質レベルの参考になりそうな競合他社製品や類似製品を見つけ、上記の方法で洗い出した試験を実施してみる。例えば、電動シェーバーと電動歯ブラシは、落下高さや防水性能の観点では類似製品といえる。

 試験では、ある一定の品質レベルを満たすかどうかを確認するのではなく、製品が壊れるまで試験を行い、その製品が持つ実力を確認する。

 また、リバースエンジニアリングによって製品を分解し、部品解析や測定を行って設計情報を収集した上で試験するのが望ましい。品質レベルと、それを担保する設計情報を併せて取得するのだ。

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