テスラは今や、EVメーカーの枠を超えた、クリーンエネルギー、AI、ロボティクスを中核とするテクノロジー企業となった。ここからは、同社の現状を事業領域と製品、工場などの観点に分けて紹介する。
テスラの事業は、「EV(Automotive)」「エネルギー(Tesla Energy)」「AI/ロボティクス(Robotics)」の3つの部門で構成されている。
テスラは現在、主力となる高性能EVから商用車まで表2に示すように多様な車種を展開している。
表2 テスラのEV部門が手掛ける車種とその概要[クリックで拡大]
現在のテスラは、成熟した既存モデルから、FSD(Full Self-Driving、完全自動運転)を前提とした次世代車両への移行期にある。
- 現在の市販モデル
- モデルS/X:テスラの技術的象徴。2026年現在は生産リソースを新型車へ割くため、限定的な販売へと移行
- モデル3(Highland):2024年の刷新により静粛性と航続距離が向上。依然として世界的な量産セダンの基準
- モデルY(Juniper):2025年末に待望のリフレッシュ版が登場。世界で最も売れているSUVのEVとしての地位を固めている
- サイバートラック:ステンレス鋼の外骨格を持つピックアップ。北米での量産が軌道に乗り、同市場の覇権を握る
- テスラ セミ:クラス8の電動トラック。ペプシコなどの大企業への納車が進み、物流の電動化をけん引している
- 未来の車両/プラットフォーム
- サイバーキャブ(ロボタクシー):2024年に発表されたハンドル/ペダルのない2人乗り専用車。トランプ政権による規制緩和を背景に、2026年内の公道試験運用が加速
- ロボバン:大人数や貨物を運ぶ自動運転バン。都市交通の再定義を目指す
- ロードスター(第2世代):圧倒的な加速性能を誇るスポーツカー。スペースXの技術を応用した「スラスター搭載」案が継続中
- 次世代プラットフォーム:2.5万ドル以下の安価なEVを実現するための低コスト基盤
- 過去/共同プロジェクト
- ロードスター(初代):テスラの原点。ロータス・エリーゼのシャシーをベースにした初の量産車
- 共同開発:かつてトヨタ(RAV4 EV)やメルセデス(A/Bクラス)へバッテリー技術を供給。現在はこれらを終了し、自社開発に特化
表3に、テスラの現在のラインアップと販売状況を示す。車種の絞り込みにより、リソースをAIと自律走行へ集中させているところだ。
表3 現在の主要ラインアップ(2026年2月時点)[クリックで拡大]
2025年は、テスラが「世界最大のEVメーカー」の座を公式に明け渡した年として記録された。
- BYDの首位奪取:2025年の世界EV販売台数で、中国のBYD(約226万台)がテスラ(約164万台)を大きく上回った。BYDが圧倒的な低価格モデルと海外輸出の強化で成長したのに対し、テスラは車種の陳腐化と補助金打ち切りが響いた形だ
- 次なる一手:マスク氏は「車を売る台数」よりも「走行データによるAIの進化」を重視する姿勢を鮮明にしている。2026年内の目標として、FSDの「監視なし」バージョンの一般公開を掲げている
テスラエナジー(Tesla Energy)は、SolarCityとZep Solarの買収/合併を通じて設立された部門であり、エネルギーの生成、貯蔵および充電インフラを提供する(表4)。
表4 テスラエナジーの事業概要[クリックで拡大]
中でも電力インフラ事業は、EV事業以上の成長を見せている。
- 充電技術:北米充電規格(NACS)が業界標準となり、フォードやGMも採用。スーパーチャージャーは世界最大の充電ネットワークとして、他社への開放による収益源(ストックビジネス)へと進化した
- テスラエナジー:
- メガパック:大規模な蓄電システム。各国の再エネ網を支え、テスラの利益の柱の一つに成長
- パワーウォール:家庭用蓄電池。VPP(仮想発電所)構想の中核を担う
- ソーラールーフ:屋根材一体型の太陽光発電
以下に、メガパック関連の工場に関する、建設や稼働の時期、特徴をまとめた。
- 1)メガファクトリーラスロップ(米国カリフォルニア州)
- 建設〜稼働:2021年取得/増改修を経て、2022年に生産稼働(「着工から約1年で量産」との報道あり)
- 特徴:年間1万台(約40GWh)規模のメガパック生産能力。テスラ公式でも「北米最大級のユーティリティー向け蓄電池工場」と位置付け
- 2)メガファクトリー上海(中国上海市)
- 建設:2024年5月23日着工(テスラ初の米国外エナジー貯蔵工場)。
- 稼働:2025年2月11日に生産開始(量産立ち上げ)。初期計画は年間1万台(=約40GWh)
- 特徴:中国/国際向けのメガパック供給拠点。2025年6月には上海での大規模蓄電所案件にも言及あり
- 3)新メガパック工場(米国テキサス州ウォーラー郡[ヒューストン西方])
- 計画状況:2025年初頭に判明。既存施設の改修と新棟建設を組み合わせ、メガパック製造拠点として2026年からの税控除スキームにひも付く形で推進。テスラの3番目のメガパック工場との位置付け(ラスロップ、上海に次ぐ)
テスラは自らを「AI企業」と位置付けており、車両製造だけでなく、AIとロボティクス技術を積極的に開発している(表5)。投資家がテスラを「AI企業」と見なす根拠を以下に挙げる。
表5 テスラのコア技術とAI[クリックで拡大]
- Optimus(オプティマス):ヒューマノイド。2025年から自社工場での実地配備が開始され、2026年内には限定的な外販も視野に入っている
- Dojo(道場):自動運転の学習に特化したスーパーコンピュータ。膨大な走行映像データを処理し、AIの進化を加速させる
- FSD(Full Self-Driving):E2E(エンドツーエンド)方式のAIモデルへ移行。トランプ政権下での規制緩和により、米国全土での「監視なし自動運転」の承認が目前に迫っている
現在のテスラは、「トランプ政権という強力な後ろ盾」を得たことで、長年の障壁であった自動運転の法規制を突破しようとしている。しかし、その代償として「EV購入税額控除の廃止」や「中国メーカー(BYDなど)との貿易摩擦激化」という新たなリスクを抱えている。EVを売るだけの会社から、AIとロボットで世界の労働と交通を自動化するインフラ企業へと脱皮できるかどうか、正念場を迎えているといえるだろう。