建造から約40年でも新技術に対応、カナダ沿岸警備隊船「ローリエ」の操舵室イマドキのフナデジ!(17)(1/3 ページ)

「船」や「港湾施設」を主役として、それらに採用されているデジタル技術にも焦点を当てて展開する本連載。第17回は、カナダ沿岸警備隊船「サー・ウィルフリッド・ローリエ」を取り上げる。

» 2026年08月07日 08時00分 公開
[長浜和也MONOist]

 2026年6月10日、東京・晴海ふ頭で、カナダ沿岸警備隊船「サー・ウィルフリッド・ローリエ」(以下、ローリエ)の船内が報道関係者に公開された。案内役を務めたのは同船 船長のリチャード・マリオット氏である。公開後には、日本とカナダによる違法、無報告、無規制(IUU)漁業対策をテーマとした記者会見も開かれた。

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バイオ燃料に対応した軽砕氷機能付きの多目的船

 ローリエは1986年に就役した、軽砕氷能力を持つ多目的船だ。砕氷や航路標識の整備、捜索救難、海洋汚染対応などに従事する一方、近年は北太平洋の公海でIUU漁業を監視する「北太平洋警備活動(Operation North Pacific Guard)」にも投入されている。2026年の任務では、漁業監督官や関係国の要員を乗せ、2カ月にわたって1万5000km以上を航行する計画だ。カナダ政府は同船を、高い航続力と継続運用能力を持ち、環境負荷を低減するバイオ燃料に対応した軽砕氷機能付きの多目的船と説明している。

晴海ふ頭に停泊するカナダ沿岸警備隊所属船「サー・ウィルフリッド・ローリエ」 晴海ふ頭に停泊するカナダ沿岸警備隊所属船「サー・ウィルフリッド・ローリエ」は1986年就役、全長83m、幅16.2m、総トン数3812.1、最大速力15.5ノット。Arctic Class 2の高耐久多目的軽砕氷船で、砕氷、航路標識整備、捜索救難、海洋汚染対応、科学調査支援に加え、近年は北太平洋でIUU漁業監視にも従事する[クリックで拡大]

 建造から約40年が経過した船と聞けば、操舵室にも旧式の機器が並んでいる姿を想像するかもしれない。実際のローリエでは、操舵輪や機関操作レバー、物理スイッチ、アナログ計器を主体とする既存の操作体系に、ディスプレイを用いた航海/監視機器が組み込まれていた。既存の操舵室レイアウトを生かしながら、必要な機器を更新し、現代の航海と監視任務に対応してきたことが分かる。

 ローリエの操舵室は、近年の統合ブリッジのように、相互接続された航海システムの情報と操作を共通のワークステーションへ集約した構成ではない。一方、最前列中央部には操舵手用のシートを置き、その周囲に操舵/機関に関する主要な表示と操作系をまとめている。通常航海に必要な主要な操舵/機関情報と操作系には、おおむねこの席からアクセスできる。これを主操船区画とし、離着岸用の両舷ウイング、航海計画を担うチャートワークエリア、通信/船内設備監視区画を周囲に配置した。

 ローリエが活動する北太平洋や北極圏では、荒天や低温だけでなく、海氷の厚さや分布が航行条件を刻々と変える。船内説明では、氷の中を単純に直進するのではなく、船体や推進機関への影響を抑えられる場所を選び、進路を左右に調整しながら進むことが紹介された。そこでは、更新された航海機器だけでなく、目視、紙海図、乗組員の経験、船橋と機関部の連携を組み合わせた判断が欠かせない。

 本稿では、公開時に撮影した写真を基に、ローリエの操舵室に設置されたシステムをコンソールごとに見ていく。約40年前の船が、機器を段階的に更新しながら、海象条件の厳しい海域における長期間の航海と広域漁業監視に対応している仕組みを解説する。

 なお、日本の水産庁とカナダ漁業海洋省は2026年2月、北太平洋公海のIUU漁業対策に関する協力覚書を締結している。取締計画の調整、職員の相互交流、取締船/航空機の配備、監視情報の共有に加え、地域漁業管理機関を通じた資源管理の強化や第三国支援も進める。2026年の活動では、相互乗船や航空監視を通じて協力を具体化している。ローリエの東京港寄港はこの活動の一環という位置付けだ。

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