シンガポール海軍のフリゲート艦に潜入! 人手不足が変える軍艦の操舵室とはイマドキのフナデジ!(18)(1/3 ページ)

「船」や「港湾施設」を主役として、それらに採用されているデジタル技術にも焦点を当てて展開する本連載。第18回は、シンガポール海軍のフリゲート艦「ステッドファースト」の操舵室配置と搭載舶用機器から、同国海軍が20年前から取り組んでいる省人化運航の取り組みを確認する。

» 2026年09月14日 06時00分 公開
[長浜和也MONOist]

 シンガポール海軍の「ステッドファースト」(RSS STEADFAST、艦番号70)は、同海軍が6隻保有するフォーミダブル級フリゲートの3番艦で、2番艦「イントレピッド」、4番艦「テネイシャス」とともに2008年2月5日に就役した。フォーミダブル級は、シンガポール海軍が「第3世代海軍」へ移行する過程で整備したステルスフリゲートで、1番艦「フォーミダブル」はフランスで建造(フランス海軍のラファイエット級の派生版がフォーミダブル級ともいえる)。2番艦以降は技術移転を受けてシンガポールのST Marineが建造している。

シンガポール海軍のフォーミダブル級フリゲート3番艦「ステッドファースト」 シンガポール海軍のフォーミダブル級フリゲート3番艦「ステッドファースト」(RSS STEADFAST、艦番号70)。2008年就役。全長114m、排水量3200tで、ステルス性を意識した船体と上部構造を持つ。なお、艦名和訳表記は海上自衛隊公式発表に準じていることに注意[クリックで拡大]

 シンガポール海軍が公表する主要要目は、全長114m、幅16m、排水量3200トン。速力は25ノット超、航続距離は3500海里超とされ、乗員72人に加えて航空要員19人が乗り組む。主な武装として76mm砲、Aster艦対空ミサイル、短魚雷などを備え、S-70B Seahawk艦載ヘリコプターも運用する。

 なお、艦対艦ミサイルとして、フォーミダブル級は新造時からHarpoonSSMを搭載しているが、今後イスラエルとシンガポールで共同開発した「ブルースピア」に換装する計画だ。ステッドファーストが2026年8月21日に東京都内で実施した船内公開では、ブルースピアが確認されている。

 こうした兵装と並んで注目したいのが、少ない乗員(シンガポールでは限られた人的資源や低出生率が問題となっている)で艦を運用するための自動化とシステム統合だ。フォーミダブル級は高度な指揮/統制/通信システムを備えるが、その統合化は戦闘指揮だけに限らない。

 今回のイマドキのフナデジ!では、シンガポール海軍が20年前から取り組んでいる省人化運航の実際をステッドファーストの操舵室配置と搭載舶用機器から確認していく。

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同じようなコンソールが複数ある理由

 ステッドファーストの操舵室は、艦橋にあるレーダーや電子海図、操舵、推進監視などの機器を相互に接続し、複数の機能を共通の操作環境から扱えるようにするIBS(Integrated Bridge System)を導入している。IBSの概念自体は最新のものではない(IMO[国際海事機関]による性能基準の採択は1996年12月4日)が、情報表示の統合だけでなく、操作環境の使いやすさや航海情報の信頼性、システム障害に対するレジリエンスまで含めた操舵室のシステム化を進めている。ステッドファーストの操舵室も、こうした「個々の機器をそれぞれ操作する」のではなく、航海や操船に必要な情報と操作機能をシステムとして構成している。

操舵室全景右舷から左舷方向 操舵室全景右舷から左舷方向[クリックで拡大]
操舵室全景左舷から右舷方向 操舵室全景左舷から右舷方向[クリックで拡大]

 ステッドファーストの操舵室に入ると、一般的な船の操舵室から想像する、中央付近に専用の操舵スタンドを置く従来型の配置とは異なることに気付く。艦首方向の中心線上には大型の操舵関連コンソールを置かず、操舵室中央のやや後方に艦長用シートを配置。その前方には艦首方向を見通せる空間を確保している。

艦長席左舷後方から操舵室前方を望む 艦長席左舷後方から操舵室前方を望む。艦長席向こうに右舷側IBC、画像左側に左舷側IBCが見える[クリックで拡大]

 艦長席の左右前方には、大型ディスプレイやキーボード、トラックボール、操舵用ジョイスティックなどを組み込んだIBC(Integrated Bridge Console)を配置する。左右舷それぞれのIBCはいずれも2人が並んで操作できる構成で、各席には共通性の高い表示/入力機器を備える。コンソール中央部には推進系を操作するレバーなどの物理操作器も組み込まれている。

右舷側IBC 右舷側IBC。ディスプレイには航海レーダー情報を重畳したECDIS(電子海図情報表示装置)画面が表示されている。ARPA(自動衝突予防援助装置)による自動追尾/衝突警報機能も備える[クリックで拡大]
左舷側IBC 左舷側IBC。右舷IBCで中央スロットルレバーの左にあった火器管制卓が右端に設置されるなど細部で違いがあるもののほぼ共通の構成としている[クリックで拡大]

 IBCを左右に配置しているのは、単純に同じ装置を2つ並べるためではない。シンガポール国防省の資料によれば、フォーミダブル級のIBCでは、オペレーターが1つの操作位置から複数のモードを切り替え、航海情報の表示や推進/機関状態の監視など、異なる機能を扱える。同じような操作環境を複数用意することで、役割ごとに専用コンソールを固定するのではなく、その時の運用に応じて使用する操作位置を選べる構成としている。

 左右のIBCのさらに外側には、性格の異なる操船用コンソールを配置している。左舷端には非常時に操舵や推進系を扱うEHS(Emergency Helmsman Station)、右舷端には離着岸時などに操艦/推進系を扱うPBS(Portable Bridge Station)を備える。両者は使用する場面こそ異なるが、通常使用するIBCとは別の位置から操艦/推進系を操作できるという点では共通している。

 操舵室中央後方の艦長席からは、前方の船外だけでなく、左右のIBCとそこで作業する当直員を見渡せる。さらにその背面を見ると、右舷側には航海データ、測深、対水速力、風向/風速などを扱う専用機器群、左舷側には海図台を配置。その内側には機関監視やダメージコントロールを扱うワークステーションも置かれている。

 このように、ステッドファーストの操舵室では、1つの操舵席を中心に機器を並べるのではなく、左右のIBCを中心として、その周囲に用途の異なる操作/監視位置を配置している。

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