千葉大学は、スズメガが複雑な神経制御に頼らず安定飛行する仕組みをシミュレーションで解明した。翅ヒンジの弾性と羽ばたき振動による「振動安定化」が飛行姿勢を受動的に支えており、バイオミメティック飛行ロボットへの応用も期待される。
千葉大学は2026年4月28日、スズメガの前進飛行のメカニズムを解明したと発表した。流体−構造連成(FSI)モデルを用いて、翅(はね)の付け根にある「翅ヒンジ」の弾性と羽ばたき振動が、飛行の安定性にどのように寄与しているかを明らかにした。
飛翔昆虫は、翅や体の高速な振動で飛行を安定させる「振動安定化(Vibrational Stabilization)」というメカニズムを持つ。今回の研究では、ホバリング(空中停止)の安定性を解明するため、弾性的な翅ヒンジと非定常な羽ばたき翼空気力学を統合した計算モデルを開発。ホバリングから高速飛行までの受動的安定性を評価した。
具体的には、振動安定化の枠組みに翅ヒンジの動態と0.9〜5.0m/sの前進速度を統合し、高速振動と体の挙動のシンクロナイゼーションを解析した。その結果、飛行速度に応じて安定化の主役が変化する「ステージ依存型の安定化戦略」を発見した。
低速飛行時には、翅の振動で生じる「振動剛性」が復元力を生み出し、ピッチ方向の安定性を維持する。速度が上がると振動剛性の影響が減り、一方で空気力学的な「減衰効果」が安定化に寄与することが分かった。
これらの成果は、昆虫が複雑な神経制御を最小限にしつつ、頑健に飛行する機構を力学的に示したものとなる。バイオミメティック飛行ロボットの制御簡素化と安定性向上への寄与が期待される。今後は、羽ばたき周波数がより高い小型昆虫におけるメカニズム解明や、AI(人工知能)駆動型シミュレーションを統合し、飛行戦略を探究するとしている。
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